知的障害生徒の職業指導
Q
知的障害の生徒の職業教育について悩んでいます。社会の要請は、なるべく働いてもらい、福祉にかかるお金を減らしたいようです。現実的には、ビルのお掃除、スーパーの裏方、パソコンのデータ入力などが主です。それに沿った力がつくように、学校の授業を変えなさいと言われています。社会に合わせるだけでよいのか考えてしまいます。
A
良いわけはないけれど、もしも「社会に合わせるだけで良くない」と言ったら、社会を変えないといけない。社会を変えるには、今クラスにいる子どもたちには間に合わない。僕、いつも不登校の問題を考えながら、不登校を何とかするためには社会を変えないといけない、学校制度を変えないといけない。学校制度を作りだしている社会を変えないといけない。社会を変えないといけないから、そう努力をするよ。未来を作るために頑張るけど、その未来は私が生きてるうちにはたぶん来ないんですよ。50年とかの時間で来るかもしれないと思うんです。来るのは来ると思うの。例えばそのー、明治になる20年前に、明治政府についてイメージできた人は誰もいなかったんです。天才・坂本龍馬がどっかの船の中で「船中八策」を書いたときに、おぼろげに初めてイメージができたけど、誰も信じなかったんですよ。薩摩の殿様も長州の殿様も、将軍様に辞めてもらって自分が将軍になろうと思ってたんですよ。でも実際に明治の世界が来たんです。そのように新しい世界が来るときってのを誰も予測しないけれども、突然来ると思う。来ると思うけど、それは先だと思う。今のところまだまだ元禄かなんかの時代で、文化文政時代かなんかで、もうちょっと先なんですよ。このままで良くないですが、じゃあこの子たちにどうするのか?この子たちにはパソコンの入力するとかお掃除するとか教えないとしょうがないじゃないですか。いつも僕は現実主義者で理想主義者なんです。理想にだけ突っ走って現実を無視してしまうと、まったく無力になるし、それから理想を無視して現実だけに巣くうとどこへも行かなくなるじゃないですか。だからいつも全体がもっと良い方向に向かうための努力は続けるべきだと思いますが、一方で目の前にいる自分のクライエント、生徒であれ患者さんであれを援助するための最大の努力はすべきだと思う。