MENU
81,685

スレッドNo.702

野田先生の補正項から

森総理大臣はなぜ嫌われる(た)か
2001年02月16日(金)

 森総理大臣が、またもやマスコミに非難されている(た)。彼ほど国民の神経を逆撫でし、生理的に嫌われる総理大臣も珍しいんじゃないか。
 ハワイ沖で、日本の水産高校の練習船がアメリカの原子力潜水艦に「撃沈」されてしまったのだが、その報告を受けたとき、森氏は神奈川県のゴルフ場にいて、帰ろうとしなかったという。その後、記者に向かって、「私が右往左往したら、かえって命令も指揮もできない」という趣旨のことを言ったとも言う。
 理屈だけを言うなら、森氏の言うとおりだと思う。情報化が進んでいるので、日本中どこにいても同じだ。一昨年、沖縄県の八重山群島の小浜島の波止場で、パソコンを携帯電話につないで、勤務先からのメールを読んでいるとき、つくづくそう思った。小浜島に住んで、大阪の会社を経営することだって、やろうと思えばできる世の中になった。森氏も、例えばアメリカ大統領に電話をかけることだって、ゴルフ場にいながらにして、やろうと思えばできただろう。
 理屈は森氏の言うとおりなのだが、国民の道徳観念は情報革命以前に形成されているので、危機が起こったときに、何はともあれ指導者が駆けつけてこないことには、むかついてしまうのだ。さらに、駆けつけてこないだけではなくて、遊んでいたとなると、真面目な日本人は絶対に許してくれないのだ。さらにさらに、道徳観念を逆撫でする理屈で言い訳するとなると、もう決して許されないのだ。
 ここ数日考えているように、道徳観念なり美意識なりの周囲に、怒りや恐怖心や嫌悪感などの陰性感情の障壁が立っていて、それでもって、そうはっきり意識していなくても、不道徳なことや醜いことをしないでおくようにプログラムされているらしい。しかし、この仕組みには、ちょっと考えただけでも、問題が2つある。
 1つは、これが人ごとに違うことだ。森氏がゴルフを続けたことに国民は嫌悪感を持ったが、森氏自身は持たなかった。国民の道徳観念と森氏の道徳観念とは違うのであろう。この点では、森氏は、外国人女性を殺したと疑われている男よりもさらに「人間離れ」している。しかし、価値観は相対的なので、森氏が間違っているとは言えない。正しいとも言えないがね。多数決は、道徳的正当性の根拠にはならない。じゃあ、何が正しいのかというと、今やそれがよくわからなくなっているのだ。
 2つ目の問題は、陰性感情の障壁は、自分の行動を律するには便利かもしれないが、他人の行動を批判するときに、陰性感情をともなって攻撃することになってしまい、理性的な話し合いが成立しにくくなることだ。罰による育児や教育の効果で陰性感情の障壁ができたのであれば、罰をやめればなくなるはずだが、そうでもないようで、先天的に、ある行動はして、ある行動はしないように、感情を使って制御するプログラムが仕込まれているようだ。生後、どういう行動にそれを適用するかを決めていくだけのように思う。だから、罰を使って育児教育しようがしなかろうが、道徳観念というものがある限り、それに反する者への怒りや憎しみもあるようで、人間はなかなか理性的に話し合うことが難しい。これは、とても困ったことだ。



感動する物語を
2001年02月17日(土)

 陰性感情の障壁があって、そのおかげで、いちいち考えなくても道徳的な行動ができることはわかった。一方、それを踏み越えることに喜びを覚える美意識があることもわかった。森鴎外が言ったように、道徳観念と美意識は、ときに矛盾するのだ。それが人間の自然(=nature=本性)なのだから、仕方がない。美意識を道徳観念と常に関係づけたのでは、窮屈でしょうがない。
 しかし、道徳観念と矛盾する美意識を、手放しで礼賛するわけにもいかない。悪徳の栄えというか、悪の華というか、フランス式の退廃は、それはそれでいいものではあるが、それだけでは困ると思うのだ。道徳観念についても美意識についても、陽性感情をともなうような領域もあるわけで、その部分も一方で宣揚されていないと、バランスがとれない。わかりやすく言うと、感動する物語が必要なんだ。
 「性」についても「暴力」についても、情報統制することに私はあまり賛成できない。情報統制すればするほど、それをかいぐぐって知りたいと思うものだから。有害図書でも何でも出版すればいいんだ。ただ、その一方で、有益図書の出版を奨励しないといけない。現代芸術の問題点は、妙に皮肉っぽく構えて、感動するような物語を語ることに躊躇を覚えるところにあるように思う。司馬遼太郎だの宮城谷昌光だのといった、ひたすら明るく感動的な物語を、もっともっと作らなければいけない。
 特に、性と暴力について、性の美しさとか、正しく制御された暴力のすがすがしさを、子どもたちに教えていかなければならないと思う。そういう物語は、まだそんなにたくさんないように思う。

引用して返信編集・削除(未編集)

このスレッドに返信

ロケットBBS

Page Top