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スレッドNo.718

野田先生の補正項から

英語の冠詞
2001年05月26日(土)

 ときどき英語の文を書かなければならなくなるが、そのとき一番困るのが冠詞で、次が前置詞だ。前置詞のほうは、辞書を丁寧に引けば、何とかならないことはないが、冠詞のほうは、辞書ではわからないことが多い。
 最近、正保富三『英語の冠詞がわかる本』(研究社)を入手して、少しずつ読んでいる。これは実に良い本だ。冠詞の使い方の原理がわかりかけてきた気がする。身につくには、まだだいぶ練習がいりそうだが。

This is the book that I bought yesterday.
This is a book that I bought yesterday.

 の違いとか、

The biggest problem was shortage of skilled workers.
The biggest problem was the shortage of skilled workers.

 の違いとか、

He's been captain for three years now.
He's been a captain for three years now.
He's been the captain for three years now.

 の違いとかを、とても論理的に、かつ統一した1つの法則で説明してある。これはすごい。
 実は、正保先生は個人的な知り合いだ。昔、ニフティの「外国語フォーラム」で知り合った。当時は大阪外国語大学の教授をされていたが、今は龍谷大学の教授をされているようだ。
 知り合いだから薦めるのではない。英語を使わなければならない人は、ぜひ読んでほしい一冊だ。



外国語の意味
2001年05月27日(日)

 アドラーの著作の古い英訳で soulと訳されているのは、もともとのドイツ語は Seele で、これはほんとうは mind と訳すのがいい。アドラーが Seele という言葉を使ったのは、単に「心」という意味でだが、英語の soul は「魂」で、宗教的な響きがある。ところで、mind という単語には対応するドイツ語がないというようなことを、フロイト派のマイケル・バリントがある本の中に書いていて、へぇ~と思ったことがある。このことと、Seele が soul と訳されたこととの間には、つながりがありそうだ。きっと、ドイツ人が英訳したんだ。英語にはもう1つ spirit という「魂」をあらわす言葉があって、これはドイツ語の Geist に対応している。さすがに翻訳者もこの単語は使わなかった。
 こんな話をしていたら、オーストラリア人の友人が、「soul と spirit はどう違うんだろうね」と言った。キリスト教の三位一体の聖霊 holy spirit のように、何だか外から憑りついてくる「魂」が spirit で、soul は、神が動物である体につけくわえてくれた、人間独特の精神機能じゃないかと私が言うと、彼女は何だか納得していた。
 昔、この反対の経験がある。ベルギー人のカトリックの神父が、「聖書に『讒言(ざんげん)する』と書いてありますが、どういう意味かわかりますか?」というので、「『そしる』ということじゃないですか?」と答えた。彼は、「そうではありません。『そしる』は、悪く言われる事実があるときに悪く言われることで、『讒言する』は、悪く言われる事実がないのに悪く言われることです」と言った。なるほどなと思った。
 こまかい言葉のニュアンスの違いは、外国人のほうがかえって敏感なのかもしれない。ちなみに、旺文社英和中辞典には、soul は「body に生命を与え、宗教的には死後も存在すると考えられる霊魂」であり、spirit は「soul と同義だが特に肉体的・物質的な存在と相反するという暗示の強い語」であると書いてある。



ホタル
2001年05月28日(月)

 高倉健と田中裕子が主演の『ホタル』という映画を見てきた。特攻隊の生き残りの人々の物語だ。こういうメジャーな映画は滅多に見ないのだが、死んだ父が、特攻隊ではないが、やはり戦争の生き残りで、「本当は昭和20年になかった命だ」とよく言っていて、そういう世代の心理がどう描かれているのか見たくて行った。
 日本映画を見るといつも感じるのだが、とにかくテンポが遅い。その割に、重要な細部の書き込みが暗示的に曖昧で、観客の想像力に委ねられすぎる。また、なぜこういう挿話が必要なのか、全体の中の位置づけのわからない回り道がある(これは、意味がわからない私が鈍いだけかもしれない)。
 一方で、画の作り方がうまい。この映画でも、鹿児島の風景が限りなくノスタルジックに描かれていて、見ているだけで感動的だった。入港する漁船のまわりに鳥山が立っているところなど、ぞっとするほどきれいだったな。人間の撮り方は、水準ではあるが、ずば抜けていると言うほどではない。
 こうして、映画を見ると、まず全体の作り方を見てしまうのだが、これって変わっているかもしれない。クラシック音楽の聴き方と同じだなと思う。全体の構成だとか、楽器の音色の配置だとかにまず注意がいって、節回しはそれよりあとなんだ。
 で、節回し、つまりストーリーだが、これはきわめて平明なので、誰が見てもわかる。話の軸は、特攻隊のことよりも、初老の夫婦の夫婦愛で、これは若い人にはピンとこないかもしれない。私はとても感動してしまったが、もうオジイだからだな。観客も、50代・60代の人が圧倒的に多かった。

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