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スレッドNo.739

野田先生の補正項から

蕎麦と鰻
2001年07月21日(土)

 昨日は、夕方に東京へ着いて、蕎麦屋へ入った。日本酒の熱燗二合とテンプラ付きのザル蕎麦を注文した。日本酒を呑みながら蕎麦をすするのは、大阪人はふつうしないのではないかと思う。こういう食べ方は江戸風なんじゃないかな。なんとなく古風でいい感じがする。一人で店に入って、徳利をかたむけて酒をすすって、ときどき蕎麦を食っている図なんか、しかし、私もすっかりオジンだな。
 悔しいけれど、蕎麦と鰻は東京がうまい。大阪の蕎麦はどうしようもない。よくまあ、あんなものを蕎麦だといって売るね。大阪の近くだと、兵庫県の出石の蕎麦はうまい。なんでも、信州のどこかの殿様が国替えになって出石にやってきて、そのときに蕎麦を移植したんだそうだ。蕎麦打ちの職人も連れてきたんだとか。だから、江戸時代の蕎麦の香りなんだろうな、ちょっと他にはないうまさだ。東京の蕎麦は、そこまではいかないが、それでもうまい。
 東京の鰻は、いちど蒸してから焼くのだそうだ。口に入れるとフワッと溶けてしまう。大阪の鰻は蒸さないで焼くので妙に脂っこくていけない。歯ざわりも粘っこくてしつこいように思う。他にうまい鰻というと、福岡県(だったよな)の柳川かな。ここの鰻はセイロ蒸しだ。歯ざわりが、東京のものとは反対で、プリプリしていていい。大阪のは、中途半端なんだよ。ちなみに、鰻が名物の浜松では、申し訳ないけれど、そんなにうまい鰻にあたったことがない。
 大阪は、食い倒れなんていうが、そんなに食べ物がうまいとは思わない。ちょっと前だが、高知県の友人(女性)が大阪に訪ねてきて、居酒屋で、やめろというのにカツオのタタキを注文した。「これ、なに?」と彼女は言った。だから頼むなといったろ。まずいんだよ、このごろの大阪の食べ物は。



呉春
2001年07月22日(日)

 名古屋で仕事をして、夕方に大阪へ帰った。家の近所の酒屋へ寄って、「呉春」という日本酒があったので買った。これは大阪の池田市の地酒で、私が知っているかぎり、もっとも旨い酒だ。なんでも、蔵元は与謝蕪村と縁者だったとかで、蕪村がこの酒のことを書いている。その時代からの銘酒だ。大阪の酒呑みなら誰でも知っているが、生産量が少ないようで、他県ではまず呑めない。
 新潟県の友人がよく酒を送ってくれる。たしかに旨い酒ではあるが、雪国の酒は、われわれ瀬戸内躁鬱圏の住人には、すこし濃厚すぎる。もうすこしあっさりした酒がいい。大阪だと、枚方市の「菊養老」は、知られていないがとてつもない銘酒だ。河内長野市の「天野酒」も、すこし癖があるが、いい酒だ。他に私が好きな酒は、大分県の「西の関」だとか、高知県の「土佐鶴」だとか、富山県の「立山」だとかいった、甘くもなく辛くもなく、呑めばいくらでも呑めるタイプの酒だ。灘の銘酒は、今では灘で生産しているわけではなくて、全国に下請けに出して作った酒をブレンドしているようなので、あまりいい酒がない。それでも、たとえば「白鷹」のような旨い酒がないことはない。




2001年07月23日(月)

 何年かに一度、蝉の多い年がある。今年は、そういう年であるようだ。朝早くから裏庭で鳴いている。それも一匹や二匹じゃない、ブラスバンドなみにたくさん鳴いている。小さな庭に、よくあれだけたくさん集まれるものだ。夜明け方にモデラート・ノン・トロッポではじまるのだが、6時を過ぎるとアレグロになり、6時半にはプレスト・モルト・アジタートだ。だから、8時過ぎまで寝ていたいのに、早く目がさめてしまう。目がさめると、暑さで眠れない。パートナーさんは、あい変わらず「クーラーはなしよっ!」とがんばっているのだ。
 しかし、伊東静雄が、蝉の声がやかましいやうでは/所詮日本の詩人にはなれまいよと、ある詩の中に書いていて、このフレーズが頭に響いてしまうのだ。私は詩人なわけじゃないが、日本人ではあって、日本人の感性としては、蝉の声をうるさがってはいけないのだなと思ってしまうのだ。



税務調査
2001年07月24日(火)

 私の大阪のオフィスに税務署の調査が入った。別に悪いことをしたわけではない。定期的な調査だ。ひさしぶりだ。普通は3年に一度あるんだそうだが、業績がよくない年には来ない。昨年度はたまたま業績がよかったので、7年ぶりだか8年ぶりだかに税務署がやってくることになった。
 私は経理のことはほとんどわからないので、はじめに事業内容の説明をしたら、後は経理部長と税理士さんにおまかせだ。彼らをある部屋に監禁しておいて、関係ないスタッフは事務室で仕事をしていた。税務署は、次々とあれこれ細かい書類を出せというようで、経理部長(実は部長しかいないのだが)はしょっちゅう事務室にやってきては、「あれはどこだっけ」、「そんなものあったっけ」などとあせっている。そのうちだんだん表情が硬くなってきて、しまいには怒りだし、「小役人め!」だの「とてもつきあってられないわ!」だのと言う。まあ、そう言わないで、つきあってやってくださいよ。あの人たちも仕事なんだから。
 結局、帳簿の不備を二ヶ所ほど指摘されて、数万円追加で納税することになった。これくらいで済んでよかったと思う。税務署は、来るたびに、とても小さなミスを摘発して、いくらか税金を持っていく。タダではぜったいに済ませてくれないようだ。しかし、よくまあ、あんな細かい仕事を毎日できるものだ。私にはできない仕事だな。感心してしまう。もっとも、向こうも、精神科医の仕事なんてできないなと言うかもしれないが。



眼鏡を買う
2001年07月25日(水)

 訪問販売の眼鏡屋さんがあって、はじめパートナーさんが誰かの紹介で知った。私もそこで、釣りのときに使う偏光レンズ付き二重焦点眼鏡と、登山のときに使う二重焦点眼鏡を作ってもらったが、とても品質がいいのに、信じられないほど安い。
 昨日、その眼鏡屋さんに大阪のオフィスまで来てもらった。彼に予約した後に税務調査が入ることが決まったのだが、まあ、経理部長以外のスタッフはそんなに仕事があるわけではないのでいいだろうと思って、断らずに来てもらうことにした。私を含めて3人が眼鏡を新調することにしていたのだが、他のスタッフもとても関心をもって、あと3人も注文することにした。その中に、税務調査で忙しい経理部長も入っていた。合間に出てきてはフレームを選んだのだ。すこしはイライラの緩和になったかもしれない。
 私は、とても気に入ったフレームがあって、これにしようと決めた。しかし、ちょっと待てよ、この模様は見覚えがあるな。たまたま山用の眼鏡を持っていたので見くらべたら、なんのことはない同じフレームだ。好みというのは一貫したものだなと感心してしまった。百以上もある候補者から、まったく同じものを買おうとするのだから。
 このごろ、性格というのは美意識の一種だと思っている。美しいことをしようということと、醜いことをしないでおこうという、両方の感覚が、人間の行動をある範囲内に定めているのではないか。そうだとすると、同じフレームを選ぶことも、そう驚くべきことではない。

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