学び方の3つのプロセス
Q
40歳主婦です。子育ても一段落つき、半年前からパートに出始めました。もともと暗いほうの性格の私です。自分が何と世間知らずなのか、何と常識がないか、思い知らされています。頭の後方から「はた迷惑だから家でおとなしくすればいい」という声が聞こえます。「少々つらくもあるが、恥をかきながら体験しなければいつまでも殻に閉じこもったままだぞ」という声も内から聞こえます。どうすればいいですか、勇気づけてください。
A
不適切な生き方、誤ったライフスタイルというのは、間違ったことを覚えたからそうなったのではなくて、「正しいやり方を知らないからそうなった」んです。非行だって神経症だって不器用な主婦だってそうです。仕事の中の人間として、職業人として働く方法を今まで学ぶ機会がなかっただけのことです。学ぶのには時間がかかります。
人間が学ぶには3つのプロセスがある。1つは知識を得ること。仕事の手順なんかを「こうやって、ああやって」と覚えること。ノートを取ったり、うちへ帰って反省してみたり、それに関する本を読んでみたりすれば得られる。
もう1つは体が覚えること。ちゃんと体がそのように動くようになること。これはスポーツと同じで、練習がいり時間がいる。知識は1回聞けば覚える。でも聞いたことが実行できるようになるには一定期間かかる。3週間とか3か月とか3年とかかかります。
もう1つはエピソード、ある出来事から学ぶ。何か事件が起こるでしょう。その事件の処理からたくさん学べる。ふだんの平常のときの業務ができるようになっても、何か事が起こるとできない。そのときに失敗するけど、そこからまた学べる。その3つのプロセスを経て人間は成長する。
仕事に就くのはいいことですね。就きたくない人は就かなくていいけど。女の人たちが結婚して子育てしている間は、外側の社会、普通の世間とある程度縁を切って暮らしているから、自分たちの持っている能力を十分発揮できない。それがこうやって職に就くとひょっとしたら発揮できるかもしれない。パートタイムが好きならそれでかまわないけど、お勧めしているのは、「この際もう1回お勉強したらどうですか?」と言っています。日本では大学に行き直すのは珍しいけど、欧米ではまったく普通です。ある年齢になって、社会人入学でもう1回大学に入るとか、通信講座で大学課程を取るとかして、何かのお勉強をしてみる。資格取得もいい。女の人たちもそんな方向へ行かれたらいいんじゃないですか。普通のおばさんたちが心理学とか社会学とか国文学とかで、もう1回通信教育で大学へ行って、ひょっとしたら資格、社会指導主事とかをもらってやってみるのもいいことです。パートタイムにこだわらないで、40歳から先、人生長いから。80歳まで生きるならあと40年ある。今まで生きてきた時間と同じです。
ただ、「年取ったら短い」とみんな言う。なんで短いか。びっくりしないから短いんです。「これも知っている。あれも知ってる」という生活をするから短い。毎日同じことが続いている。だから長くしようと思ったら、びっくりして暮らせばいい。新しいことを始めて、知らない世界へ絶えず入って行けば、子ども時代と同じように毎日朝から晩までびっくりして暮らせるから、人生うんと長くなります。ぜひ、びっくりして暮らしましょう。(野田俊作)