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スレッドNo.808

漫才の呼吸    野田俊作

漫才の呼吸
2001年11月18日(日)

 ある小学校の先生と話をしていた。ホームルームなどで、「クラスみんなが仲良くするためのアイデアを出してください」などと呼びかけても、誰もなにも言ってくれないという。「それは、みんなが正解を出そうと思っているからじゃないですか。『間違っていても、馬鹿げていても、なんでもいいから、面白い答えをください。たとえば、1日1回先生を殴る、とか』なんて言って呼びかけたらどうですか」と私が言うと、「面白い答えね、それなら出ると思います」と言う。出たアイデアを、とにかく黒板に書き並べて、後でいいのを探し出せばいいんだ。いわゆるブレーンストーミングですね。しかし、この「面白い答え」という言い方がウケるのは、関西だけかもしれないなと、ちょっと不安だ。
 これは別の人との対話だが、「野田先生、インターネットですけど」、「インターネットね」、「うまいこと繋がりませんねん」、「繋がりませんか」、と、ここまで喋って、これは完全に漫才の呼吸だと気がついた。大阪で育つと、小学校に入ったとたん、いや幼稚園からかもしれないな、漫才の世界に放り込まれる。その呼吸を呑み込まないといじめられるので、みんな必死でそのテンポで話をする練習をする。だから、関西人は(ただし、京都人と近江人はすこし違うかもしれないが)そういう呼吸で話をする訓練が行き届いていて、しかも、自然にボケとツッコミに分業して、笑いをとろうとする。
 東京でも仕事をしているが、私のほうから「○○さん、インターネットですが」と言ったとして、その後、「インターネットですか」と受けてくれないで、「はあ」かなんか言われてしまうことが多くて、そうなると、「うまく繋がらないんです」、「繋がりませんか」というようにテンポよく対話が進まない。適切な間をおいて「インターネットですか」と同語反復的に受けてくれないと、次がうまく出ないのだ。しかし、幼少期から訓練を受けていない関東人にそういうことを期待するわけにはいかないので、うまく話が続かないなと苦しみながら仕事をしている。
 さらには「1日1回先生を殴るとかいった面白いアイデア」なんていうと、「先生を殴るのが、どこが面白いんですか?」と叱られそうな気がする。だからさぁ、笑いをとってるんだよ、笑いを。困った世界だな。



路上対話
2001年11月19日(月)

 9月下旬からパートナーさんと歩きはじめたが(09/27)、まだ続いている。午後10時ごろから30分ほど、近所を歩く。「雨の日も風の日も」というわけではなくて、天気のよい日だけにしている。無理しないことが継続するコツだ。このごろ私は12キロほど荷物をかついでいる。足首ウェイトも、1キロずつつけている。冬の間はあまり山にいけないので、筋肉が衰えるのを防がなくてはね。昨年、ダイエットに成功したが、筋肉が衰えてしまった(01/02)。今年に入ってからは、体重はほぼ横ばいで、筋力はずいぶん回復した。パートナーさんは、「汗をかかないといけない」とお医者さんに言われたとかで、サウナスーツを着て、足首ウェイトを500グラムずつつけている。異様な姿のカップルだ。
 歩きながら、いろんな話をする。話ができる程度の速度で歩いているということだ。いちばん多い話題は、パートナーさんがカウンセリングしている事例のことじゃないかな。彼女は児童相談の専門家なので、小学生や中学生の事例が多い。障害児たちもいる。彼女の事例を私がスーパーヴィジョンしているわけではない。スーパーヴィジョンしようにも、私は子どもの臨床は経験がないので、どう助言していいかわからない。ただ彼女の話を聞いて、めずらしがったり面白がったりしているだけのことだ。それでも彼女には助けになるようだ。私のほうは、心理学の基礎理論について最近考えていることを話すことが多いように思う。話しているうちに、だんだんとアイデアの隙間が埋まってくる。とても有益な時間だ。もちろん、事例のことや理論のことだけではなく、さまざまの雑談もする。そう年がら年中お勉強の話をしているわけじゃないよ。
 こうして歩くようになって、さまざまの話ができるようになった。家にいても、けっこうよく話し合うカップルだと思っていたのだが、やはりテレビを見ながらとか食事をしながらとかいう「ながら」では、本気になっていないんだね。歩きに出ると、気を紛らわせるものがないので、話を真剣に聞く。真剣に聞いてもらえるおかげで、考えが整理できる。これは、とてもいいことだ。これから寒くなるので、続けるのに毎回決心がいるだろうが、楽しんで続けたいと思っている。

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