Quality of Life
Q
QOL(=生きることの質)を問うことが大切だということですが、問うことでかえって生に執着させてしまうように思うのですがいかがでしょうか?
A
Quality of Life。これは割と明確に定義された概念です。質というよりも、身のまわりのことを自分でできるかどうか、食事できるかどうか、家族とお話できるかどうか、散歩できるかどうか、自動車に乗れるかどうか、2階へ自分で上がれるかどうか、身体の生活を遂行する上でできる力のことを主に言う。これを保証したい。
精神的な質を医学は保障できない。精神医学であっても。その人が幸せに暮すかどうかは医学側の問題ではない。その人が歩けるかどうか、2階へ自力で上がれるかどうか、トイレを自分でできるかはかなり医学上の問題です。
そういう人間が、人間としての尊厳を保てるさまざまの生活上の工夫ができるように、それと、命の長さを犠牲にしてでも自分で生活して、自分で社会人らしく暮らせるほうを選ぶように、というのが今の考え方です。昔は、寝たきりになろうが点滴だらけになろうが長生きするほうを選んでいた。問題なく。それがそうでなくなったのは、医学のちょっとした革命です。(野田俊作)