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スレッドNo.884

高学歴ワーキングプア

Q 
 長男は26歳。東京で一橋大の大学院でドイツ文化論を専攻しています(ヒマ人だなあ)。しかし博士課程を出ると30歳になり、今の状態を聞くと、その年から大学で安定した職を得ることは極めて厳しく(ほんとにそうだ)、いわゆる高学歴ワーキングプアとなって、不安定な条件の中で生きていかなければならない可能性が大とのことです(そうですね)。先日私もテレビで高学歴ワーキングプアがたくさん存在し、悲惨な生活を送っていることを報道した学歴を見て、びっくりというかガックリしました。それで本人に(おー、過保護)「大学院に残るのをやめて就職活動をしてみたら?」と言ったのですが、本人は「やることはやってみるよ。お父さんも知ってのとおり、今は100年に一度の世界的経済危機で、やりたい仕事は簡単に見つからない」と言います。確かにタイミングは最悪。「どうしたい?」と聞くと、「この経済危機の中では大学院で研究しているほうがまだマシかな。社会状況の変化を見ながら進路を考えていく。とにかくまだ院に残る」と答えました。なるほどとは思うけど、博士を出てから職のないいわゆる野良博士になってしまいそうで、こちらの経済的援助も覚悟しないといけないかなと思うと、しんどい気持ちになってしまいます。野田先生、どうか良いご助言をお願いします。

A
 えー、ミスキャスト。私は一種のワーキングプアです(爆笑)。僕の同級生たちは大学の教授とか公立病院の院長とか開業医とかになって、いわゆる健康保険というものとか国というものからお金をもらって、とてもまっとうな職業に就いていますが、私は健康保険にも国にも企業にもお世話にならず、零細企業の親分をやって、こんな所へ来て人々を言いくるめて騙して暮らしているわけで、でもこれは僕のほんとの仕事じゃなくて、ほんとの仕事というのは誰も読まない論文を書くという、世のために人のためにまったく役に立たないことをするというのが本来の業務ですから、立派に高学歴ワーキングプアなんですよ。プアのほうも大変誇りがありまして、なんでこんな所へ(講演に)来ているかというと、金がなくなったから来ているわけで、私に聞くのはまったくのミスキャストだと思います。ちゃんと生きていけます。僕もたくさんそういう友だちがいます。非常勤講師しながらときどき本を書いて、誰も読まないような本を書いて、いっとき売れてすぐ売れなくなって、まあしょうないわと、学生向きの教科書を書いて自分の講義を採る学生に無理やり売りつけて、みんなブーブー言いながらそれ買って、それで暮らしている人がいて、そういう人たちが社会の底辺を支えているんですよ。大学院出た博士たちが。次の時代の一番底ならしをしてるんだから、誰かがそうしなきゃいけないので、そりゃあ会社へ勤めて、ほんとに生産的な現場でね、日本の総生産を上げるのもとても立派な仕事だと思うけど、学生たちに向かって一生何の役にも立たないような講義をして単位をあげる、で、ときどき試験していじわるするいうのも、これも立派な仕事だと思うんです。人それぞれ向き不向きがありますから、あんまり子どもの職業に、この年になってから介入しないほうがいいと思います。皆、親の世話にならないで、貧しいながらで暮らしていますので、何とかなるでしょう、はい。きっと大丈夫だと思います。だから、お任せしたら。「子どもを信頼しなさい」とさっき言ったでしょう。(野田俊作)

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