ゼロ歳からの勇気づけ
Q
ゼロ歳から勇気づけの子育てはできるでしょうか?もしできるなら、まだ言葉を話さない子どもの事例で教えてください。
A
あの、ジュヌヴィエーヴ・ペインターというハワイにいたアドラーのおばさまが、ゼロ歳児の勇気づけの本を書いたんですよ。僕、「そんなバカな!」と思ったんですよ。なんかいっぱい書いてあるんだけど、「うっそー!」って思って、ペインターさんに会ったときに、「あなた、あの本ちょっとインチキみたい」と言ったら、「そうなのよ」と彼女言うんですよ。「なんであんなの書いたん?」と言ったら、「ゼロ歳児の頭を良くするペインターおもちゃキット」というのがあるんです。シンガポールかどっかで作っていて、彼女は老後の生活設計で、それを売りたいんですよ。それを売るために、「ほら、このおもちゃキットを使うとこんなに賢くなる」と書いたんです。あれはまあアドラー心理学みたいなふりしているけど、実はペインターさんの生活設計なんですね。先ほども申しましたが、ちゃんと言葉が通じるようになるまでの子どもは、かわいがって育てるということだけで充分なんです。その時期に躾けるとか難しいことを考えないで、良い母子関係・良い父子関係を保つこと。僕たちが狂わないで、神経症とか精神病とか犯罪者とかにならないで、正常な人として暮らす条件の1つが、ゼロ歳から3歳ぐらいまでにお父さんやお母さんからかわいがられたことだと思うんですよ。かわいがられた記憶が全然ないと、やっぱりしんどいんです。「この世界は良いところだ」とか「人々は仲間だ」と思いにくいじゃない。だから僕たちは、ゼロ歳から3歳までの子どもをみんなでかわいがって育てるのがいいと思う。こんなん言うとまた、ある種の人たちの反発を買うんですが、僕、ある年齢までは母親が子どもの側にいてあげたほうがいいと思っているんです、ずっと。だいたいアドラー派の人はみなそう言うんですけど、今のお母さんたちはみんな凄く早く働きに出たがるんですね。働くことは女性の権利だと言って、それで子どもたちを託児したりするのを国の責任だと言って、早くから託児所とか保育所へ預けるんですよ。生活に困るなら、ほんとに食べていくことに困るなら、それはやむをえないけど、あくまでやむをえないことなんです。子どもは母親との良い関係を持つほうが、どんなに良い保育士さんでも母親には負けますから、だから持つほうがいいと思います。そんなん言うと、「女性の自立を侵害してる。なんで男性ではいけないのか」とか言う。「お父さんでいいか」どうか子どもに訊いてよ。「お父さんがずっとあなたが小学校出るまで家にいるのがいいか」「お母さんがいるのがいいか」と訊いたら、ほとんど全部の子が「お母さんがいい」と言いますよ。家にお父さんがいて、「お帰り」と言うのは、あんまり子どもとしては好みじゃないんです。そうやって温かい良い母子関係を作れるということが大事。それをすると女の人は欲求不満になるの。「どうして私は外へ出られないの!」って。「夫は毎日飲みにいって楽しくしてるのに、私はずっと子どもと二人で」って。なんでそう思うかというと、“地域”がなくなったからですね。だから、母親が家にいて育児をしながら快適に暮らせるというのを工夫すべきで、1日も早く外へ働きに出られるというほうを工夫すべきじゃないと思うんです。ちょっと余談。怒る人は怒ってね。今はこの意見は少数派ですから。心理学者はみんなそう思ってるんです。心理学者自身は。(野田俊作)