加齢 野田俊作
加齢
2002年09月15日(日)
今日から2日間のワークショップをしている。古くからの仲間が大勢来てくれて、あれこれ話をしていると、成人病になって、やれ手術を勧められただの、治療に通っているだのという話が多い。仲間たちが年相応の病気になってゆく。そりゃそうだわね、10年つきあえば10歳年をとるんだもの。若々しい青年だった人たちが、中年になり初老になる。
病気の相談をされると、年齢を聞くが、相手が思っていたより年をとっているので驚く。はじめて出会ったときの年齢のままでいつまでもいるように思っているんだ。35歳で出会った人も、10年経てば45歳なんだね。当たり前のことだけれど。
『バラの騎士』というリヒヤルト・シュトラウスの美しいオペラがあって、若い恋人と浮気をしている元帥夫人が、自分が年をとってきていて、若い恋人といつまでもは一緒にいられないだろうことを嘆く歌がある。アール・デコ風のとても濃艶な音楽だが、なんとなくその場面を思い出しながら、友人たちの病気の話を聞いていた。音楽のたとえ話は、知らない人にはなにも伝わらないので申し訳ないな。
ザウアークラウト
2002年09月16日(月)
東京でのワークショップが終わって、新宿へ出た。事務所は日暮里の近くにあるので、新宿は山手線の反対側になり、滅多に来る機会がない。仲間と軽く食事をしようと思ったが、土地勘がない。とりあえず駅前のビアホールに入った。ハーフ&ハーフという、普通のビールと黒ビールを等量に混合したもので乾杯。これはなぜ流行らないのだろう。日本人好みだと思うんだがな。料理は、ビアホールのことだから、ソーセージなどを頼んだのだが、それに温めたザウアークラウト(ドイツ風酢キャベツ)がつけあわせについてきた。
ザウアークラウトにはちょっとした思い出がある。大昔にウィーンへ行って、レストランに入った。ヴィーナー・シュニッツエルというトンカツのようなものを注文したら、ウェイトレスさんが「あなたはザウアークラウトが食べられるか?」と尋ねる。いや、正確には、"Koennen Sie ***** essen?" で、「ザウアークラウト」の部分がよく聞き取れなかった。というのは、ザウアークラウトというものを知らなかったからだ。それなのに私は "Ja, wohl!"(もちろん!)だかなんだか答えてしまった。そうして来たのを見たら驚いたね、お皿に暖めたザウアークラウトが山盛りになっていて、そのうえにシュニッツエルがちょこんと乗っている。彼女がわざわざ尋ねたのは、外国人にはこれを食べられない人が多いからなんだろうと、それが来てから気がついた。「もちろん」と言った手前、目を白黒させながら、なんとか全部いただいた。
おいしくなかったよ。そもそも、酸っぱいものは苦手なんだ。でも、何度か食べているうちに、好きになってしまった。レヴィ・ストロースが書いていたのだと思うが、発酵食品は民族差が大きくて、他民族の発酵食品にはなかなか慣れないという。たしかに、わたしの友人の西洋人たちの中に、何年も日本に住んでいるのに、タクアンが食べられない人が多いな。発酵食品は、慣れるまで大変だが、慣れるとやみつきになるということもある。ザウアークラウトについてはその口で、今は慣れてやみつきになって、大好きだ。
しかし、他の日本人は、これは食べないだろうと思っていた。そうじゃないんだね、みんなおいしそうに食べている。時代が変わったというのか、西洋化したというのか、私の常識は古いんだ。
鼻毛
2002年09月17日(火)
ときどき秘書に、「社長、鼻毛が出ていますよ」と言われる。このごろ鼻毛が白髪になって、いっそう目立つようだ。大急ぎで切ってから、「女性はあまり鼻毛が出ていることがないみたいだね。男ほどはのびないんだろうか」と秘書に言うと、「ていねいに鏡を見ますから」と言われた。男だって鏡を見ないことはないのだが、たしかにていねいには見ていない。自分の顔がどんな風であるかに、女性ほどは関心を持っていないのだ。それに対して、女性が鏡を見るのは死活問題なんだな。これは、当たり前のことだが、私にとってはちょっとした発見だった。
ところで、大阪の事務所でも東京の事務所でも「社長」と呼ばれていて、これが気に入っている。ある友人に、「『社長』ってのはよくないですよ。『先生』にしたら?」と言われた。彼自身が経営者なのだが、会社では「社長」とは呼ばせていないようだ。「でも、私は『社長』って呼ばれるのが好きなんです。『先生』っていうのは、職業意識が出て、くつろげないんですよ。大阪で『社長』っていうと、財津一郎がやっているテレビCMを思い出す人が多いと思うんだけれど、そういう雰囲気が好きなんです」と答えた。
財津一郎が演じる町工場の社長もいいけれど、『釣りバカ日記』で三國連太郎が演じる大企業の社長もいいな。私が出社すると、タイトスカートの制服を着た受け付けの女の子たちが「社長、おはようございます」なんて言うんだ。そういう生活をしてみたいものだと思わないでもない。こんなことを考えているから鼻毛がのびるんだ。いや、こういう場合にのびるのは鼻の下か。