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スレッドNo.955

諸法実相   野田俊作

諸法実相
2002年09月28日(土)

 インド仏教では「AにBがある」という構文をもとに考えるということを書いた。たとえば、「花は赤い」とか「人は死ぬ」とかいう文を、「花に赤がある」とか「人に死がある」とかいう構文に変換して考える。Aを有法(うほう、ダルミン)、Bを法(ダルマ)という。
 ヒンズー教は有法の実在を認めるが、仏教は有法は法の集合体であって実在しないと考える。『ミリンダ王の問い』という古い論典に、車は存在せず、ただ存在するのは車輪や車軸や座席などであると書かれている。これは、「車に車輪がある」などの構文をもとに、有法である車は実在せず、ただ車軸などの法だけが実在することを主張している。これは、「我」は実在せず、ただ実在するのは「色(しき)・受・想・行・識」というような要素だけだということのたとえ話だ。
 「説一切有部」などの部派仏教は、有法は実在しないが、色・受・想・行・識などの法は実在すると考えた。中観派や唯識派などの大乗仏教は法もまた実在ではないと考えた。大乗仏教のほうが論理的だと思う。というのは、「AにBがある」と考えるなら、Aは名詞だがBは形容詞や動詞等でもよいことになる。たとえば、「花は赤い」では「赤い」は形容詞だし、「人は死ぬ」では「死ぬ」は動詞だ。すなわち、形容詞だとか動詞だとかいうのは、Bが実在ではなくて現象だということだ。
 中国仏教では、Aのことを「性(しょう)」、Bのことを「相」と呼んだのではないかと、私は思っている。もっとも、性や相は、インド仏教の術語と一対一に対応していない中国仏教独特の概念なので、このあてはめ方は、専門家から見ると乱暴だと思うが、まあ近似的にそうだということだ。
 さて、法華経の「諸法実相」だが、このような文脈で読み解くと、妙な術語だ。仏教では、「実性」という言葉は使えない。「自性は空」すなわち「有法は実在しない」ということは、部派仏教でも大乗仏教でも認めていて、もし性の実在を認めるとヒンズー教になってしまう。もし「実」なるものがあるとすれば、それは「実性」ではなくて「実相」でなければならない。しかし、相が実であれば、大乗仏教ではなくて、説一切有部などの部派仏教だ。大乗仏教では、「性も空、相もまた空」でなければならない。すなわち「諸法皆空」なのだ。だから「諸法実相」という用語は、まったく大乗仏教的でない。
 この用語はクマーラジーヴァが発明したもので、法華経のサンスクリット原典にはない。さらに悪いことに、クマーラジーヴァは、法華経だけでなく『中論』や『大智度論』の訳文中にも「諸法実相」という用語を使っていて、しかもそれに相当するサンスクリットはない。しかし、中国人は、漢訳された仏典だけをもとに研究を進めたので、それらの間に関係を見つけだし、たとえば天台教学ができる。今はサンスクリットで経典が読めるんだし、1500年も前の中国人の誤訳と誤解を引きずって暮らすことはないと、私は思う。



ライフスタイル診断
2002年09月29日(日)

 昨日と今日とは、新潟県下で合宿して、ライフスタイル診断の実習をしていた。「ライフスタイル」とは、アドラー心理学の用語で、ほぼ「性格」とか「人格」とかに相当する言葉だが、特有のニュアンスがある。それを、きょうだい関係や、いくつかの特殊な質問や、子ども時代の思い出から診断する。参加者にもたくさん実習してもらったが、1人のボランティアのライフスタイルを私が分析してデモンストレーションをした。
 むかし、シカゴのアルフレッド・アドラー研究所に留学して、最初の講座を聞いたとき、ハロルド・モザク先生がライフスタイル診断のデモンストレーションをして見せてくれた。ショックを受けてしまった。ほんのわずかのデータから、見事にライフスタイルを抽出する。「この技術はぜひとも会得しなければ」と思って、それから毎日、患者さんや看護師さんや友だちにライフスタイル分析をさせてもらった。帰るころにはほぼ習得できていて、帰国してからも、ことあるたびにいろんな人のライフスタイル分析をして暮らした。
 アドラー心理学を教えはじめるようになって、ライフスタイル分析のデモンストレーションをすると、生徒は私とはライフタイルが違うんだね、「この技術はとうてい習得できない」と思うみたいで、みんな引っ込んでしまう。それで、デモンストレーションはやめてしまった。
 しかし、年を取ってきて、このごろ思うのだが、私の頭の中にあるものはみんな見せておいたほうがいいんじゃないか。あの世までは持っていけないものね。だから、今年になって、機会があればデモンストレーションをして見せている。そのうち、ただ舌を巻くだけじゃなくて、まねをしようとする人が現れるのを待ちながら。

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