役に立たない学問を 野田俊作
役に立たない学問を
2002年12月01日(日)
このごろ学校の先生方と話をする機会が多くて、そこで感じたことなのだが、「実社会に出て役に立つ学問」と「知的な興味をかきたてて面白い学問」とが、なんとなく中途半端に混合して教えられていて、それが子どもを混乱させているのではないかと思うのだ。まあ、教育についてはまったくの素人が言うことなのだから、見当はずれの批判なのかもしれないが。
たとえばブザーのことを考えてみる。電磁石の側に弾性のある鉄片を置いて、同時にそれをスイッチにしておく。電磁石に電流を流すと、鉄片を引きつける。そうするとスイッチが切れる。その結果、鉄片は電磁石から離れる。離れるとスイッチが入る。鉄片はまた電磁石に引きつけられ、スイッチが切れる。以下、同様の繰り返しで、鉄片は振動を続ける。これが空気に伝わって音に変わる。面白い現象だが、じゃあ、実社会で役立つか。ブザーを自作する人はいないんじゃないか。しかし、「自作しないにしても、ブザーはあちこちにあるので、その原理がわかっているのはいいことだ」とおっしゃるかもしれない。どっこい、そうはいかない。最近のブザーはこの原理では動いていない。中にICが入っていて、それが振動を作り出している。
言いたいのは、ある時代(1960年代かな)から、日常出会う技術が、初等中等教育のレベルでは理解できないものになったということだ。私は小学校のころカマボコ板の上にエナメル線を巻いた五寸釘とブリキ板を使ってブザーも自作したし、鉱石ラジオも自作した。中学に入ったら当時1V1(高周波増幅1段+検波+低周波増幅1段)と呼ばれる真空管式短波ラジオも自作したし、高校に入ったら高1中2(高周波増幅1段+中間周波増幅2段)と呼ばれるスーパーヘテロダイン短波ラジオも自作した。ここらあたりまでは、ただ作れるだけじゃなくて、高校生にも原理が完全に理解できた。
そのころFM放送が始まり、ちょっと高校生の手に負えなくなった。テレビも、もちろん手に負えない。FM受信機だってテレビだって、作るだけなら作れたけれど、原理の細かいところが理解できない。今の技術はもっと理解できない。CDがどういう原理で音を録音していて、それがどういう原理で再生されるかわかりますか?デジタル放送ってどういうことになっているかわかりますか?すくなくとも中学生や高校生の手には負えそうにない。結局、人々は、機械の中はブラックボックスだということにしておいて、ただ操作の方法だけを覚える。昔だって、科学技術に関心のない人々はそうだっただろう。でも、今は、日常生活で普通に使われる技術でさえ、科学技術に関心のある子どもたちでも理解できないほど複雑化した。
だから、もう「実社会で役に立つ」は、あまりこだわらなくてもいいんじゃないか。それよりも、「知的な関心を引く」に徹したほうがいいのではないか。そう割り切ると、数学なんて、「ある数を2乗して、同じ数を2倍したものを引いて、それに1を足したら0になる、その数はな~んだ」ということにすぎないから、ただのクイズないしパズルだ。こういうクイズが好きな子どももいるだろうし、関心がない子どももいるだろう。関心がない子どもに無理に学ばせることもないだろう。どのみち、実社会に出て役に立つものじゃないんだから。だから、ある領域に関心を持てない子は、その領域の学習を早い時期に免除したほうがいいのではないか。数学であれ古文であれ化学であれ、実社会に出て役に立つものじゃないんだ。けれど、ある子どもたちにとってはとても面白いのだ。面白いものはたくさん学んでもらい、面白くないものは免除する。それでは、やはり具合が悪いんだろうね。なんだか難しい議論があって。
24時間心電図
2002年12月02日(月)
病院へ行って、24時間心電図の装置を装着された。胸に電極をテープで固定して、装置は腰にベルトでとめておく。装置の大きさは、むかしのウォークマンくらいで、あまり邪魔にならない。しかし、テープを貼ってある部分がとても気になる。
カードを渡されて、時間と行動を記録しておくように言われる。いちいち書いていたのでは面倒なので、ICレコーダに吹き込んで、後でまとめて書くことにする。病院を出てすぐに「○時○分、病院を出て歩きはじめる」と言う。駅に着くと、「○時○分、駅について立ち止まる」と言う。人が大勢いるが、そういうのを気にしないほどオジサンになってしまった。
夜、お酒を飲もうかどうか考える。晩酌、つまり夕食と一緒に飲酒すること、はしないことが多く、夜の10時すぎから寝酒のようにして飲むことが多い。お酒を飲むと不整脈は確実に悪くなるので、最近は外では飲まないことにしているし、家でも飲まないこともある。しかし、飲むこともあるのだから、検査中も飲んでおいた方が実態に近いと思い、ワイン180mlを飲むことにした。このごろはだいたいこれくらいの量だ。島根県の友人に「葡萄神話」という島根県産のワインをいただいたので、それを飲む。このワインは、国産にしてはとてもよくできている。
いつもはその後で入浴する。一家の事情で、早めに入浴してからお酒を、というのは不可能なので、就寝直前に入浴する。しかし、今日は入浴は禁止だ。ちょっと物足りない。
負荷心電図
2002年12月03日(火)
昨日装着した24時間心電計をはずしてもらいに病院へ行ったついでに、心臓のエコー検査と負荷心電図の検査を受けた。
エコー検査は横になって、かわいいお姉さんの検査技師さんに胸をまさぐられていればいいだけなので、なんということはなかった。30分以上もかかって心臓の動きを見てくださった。隣の部屋では胃カメラをしているみたいで、「喉に麻酔をしますから」だの「つばを飲み込むと肺に入りますから」だのと恐い注意をする声が聞こえる。しかし、こちらは楽なもので、途中でちょっと眠ってしまったかもしれない。
負荷心電図は、むかしは階段の昇降をしたのだが、最近は自転車こぎをさせられる。検査技師さんとお医者さんと、男性二人でお世話をしてくださる。自転車の上に座らされ、胸一面に電極を装着される。まず使用前の心電図。「だいたい3回に1回は期外収縮です」と技師さん。「ほう、ずいぶん出ていますね」とお医者さん。どうりで、昨日と今日は調子が悪いと思ったよ。「じゃあ、はじめてください。脚がだるくなったり胸が苦しくなったら言ってくださいね」と言われて、ペダルをこぎはじめる。一定速度以上を保つように言われてこぎだしたが、ペダルは軽くて、なんということはない。
ところが数分すると、なんだかすこし重くなってきた。疲れたのかなと思っていたのだが、しばらくするともっと重くなる。「ペダルを重くしているんですか?」と聞くと、「もっと重くしますからね」とお医者さんがおっしゃる。これは大変だ。なかなかの重労働だぜ。検査技師さんが1分間の不整脈の数を報告する。運動が激しくなると不整脈はかえって減るみたいだ。「苦しくありませんか?」とお医者さん。「だいじょうぶですよ」。「元気ですね」。元気じゃないよ、だから病院へ来ているんじゃないか。
10分あまりペダルをこいだが、最後は汗まみれになった。「足はだるくないですか?」と検査技師さん。「だいじょうぶです」。「しかし、ここまでヘバらない人はめずらしいね」とお医者さん。なんだって、じゃあスペシャル・サービスで、他の患者さんよりたくさん働かせたの?「なにか運動していますか」と検査技師さん。「登山をしています」。「ああ、道理でね。終わってから、脈拍数もすぐに元に戻ったし。いいですね」。よかないよ、こんなに不整脈があるのに。
最終的な検査結果は、来週の診察のときに教えてもらえる。私は循環器内科は素人同然だけれど、負荷心電図を見ていると、どう見ても死なないタイプの不整脈だ。心臓そのものは丈夫だと思う。しかし、自覚症状はかなり苦しいんだよ。ニコニコ暮らしているけれどね。