アイビーの俳句鑑賞
アイビーの俳句鑑賞
薫風や釣り竿並ぶ防波堤(てつを)
絶好の釣りシーズンとなり、突堤に太公望たちが釣り糸を垂らす様は壮観だ。絵画的な構図を俳句に取り入れた辺りが巧いと思いました。兼題の「薫風」を上五に置いてすっきりと形のよい句になったと思います。
遠花火遅れて音のどどどんどん(野の風)
夏の夜を彩る花火。同じ花火の句でも、この句は光と音の時間差に焦点を絞ったところに新味があります。遠花火だから、ずいぶん時間が経ってから音が到着します。そこに面白味を感じた作者、「どどどんどん」と腹に響く擬音も効果的です。
風薫るうの文字揺るる紺のれん(泉也)
作者によれば季重りを避けるために「う」の字の暖簾にしたのだが、これが大正解。鰻屋の「う」の字はいかにも鰻らしく筆太でそれらしく書いてあるから、暖簾が揺れれば、まるで鰻がくねっているように見える。「風薫る」が臭覚に訴え、「う」の字暖簾は視覚に訴える。人間の五感を駆使した秀句。
新緑を両岸におき五十鈴川(新之助)
伊勢神宮の神域を流れる五十鈴川。神宮の森も新緑の盛りだ。新緑を両岸に置いたという表現が新鮮で魅かれるものがある。参拝を前に、身も心も清める作者の新之助さん。初夏に相応しい清々しい句になったと思います。