アイビーの俳句鑑賞
アイビーの俳句鑑賞です。
〇麦の秋審判をらぬ草野球 てつをさん
広場で野球に興ずる少年たち。ぎりぎりの人数なので審判をおく余裕が無い。かくして審判抜きの野球となった。良くしたもので、審判がいなくてもアウト、セーフで揉めたりしない。雰囲気が麦の秋とぴったり合っている。
菜園の話のはずみ豆の飯 てつをさん
趣味の野菜作り。同じ趣味の仲間同士だから話が弾む。豆ごはんを炊いたところが、苦労話や成功談に話が尽きることはない。豆ごはんを介して、和やかな人間関係が垣間見えるようだ。
麦藁帽ちょきちょきちょきと松手入れ 新之助さん
「ちょきちょきちょき」と三度繰り返したフレーズが、心地よいリズムを呼んだ。ほかに何を言ってるわけではないがオノマトペの巧みさと相まって、いい味を出している。厳密には季重なりだが、苦にならない。
〇久々に尋ぬる郷は麦の秋 泉也さん
両親が亡くなれば、故郷と言っても足が遠のく。ことさら故郷を訪れる理由がないからだ。何か用事があって久しぶりに郷を訪れたところ、昔のままの佇まいに懐旧の念一入。おりしも郷里は豊穣の麦の秋であった。
滝しぶき浴びつ屈託溶かしけり 泉也さん
何と言っても中七から座五の「屈託溶かしけり」の措辞が素晴らしい。ユニークな表現は追随を許さないものがある。切れ字「けり」を使って強く言い切るところも良いと思った。