ニュース備忘録 日本の半導体産業がダメになった原因はやはりコト作り無しのモノ作りだった
今日のYahooニュースに元日立専務の牧本氏のインタビュー記事 三上 佳大氏の記事です。
短縮リンク https://tinyurl.com/234plgnx
記事抜粋させていただきました。
――著書では、日本企業がかつて世界の半導体市場で50%のシェアを占めていたものの、半導体摩擦をきっかけに大きくシェアを低下させた経緯が語られています。この原因について、どのように分析されていますか。
牧本 世界の半導体産業が「How to make(製造)」指向から「What to make(企画・設計)」指向へシフトする中、日本の半導体メーカーはその変化に対応できませんでした。ここに日本の敗因があると考えています。この点については、1988年と2023年の半導体業界上位10社を比較すれば一目瞭然です。
著書は、
2024年9月に著書『日本半導体物語 パイオニアの証言』(筑摩書房)を出版した「ミスター半導体」こと元日立製作所 専務取締役の牧本次生氏
What to make コト作りに近い表現です。HOW to makeはモノ作りだけの意味です。
●コト作り無しでモノ作りに突進しないための注意事項
①今ある技術でモノを作ろうとすることは、コト作りに適したモノ作りではありません。
=>自社技術とか自分が得意だから、それで、モノ作りをしようとすることはコト作り違反です。
何が出来るコトなのかを定義して、それに適した技術を選択します。それに自社技術がそぐわなければ
適した技術を使うのが、コト作りの正答です。
②コト作りの仕方
=>一言で言えば、企画のコンセプトとして誰にでもプレゼンできるフレーズがコト作りです。
=>コト作りに適した技術がなければ、技術に適したコト作りします。ですので、コト作りがモノ作り同等に上手になる必要があります。コト作りは、マーケティングとか、営業とか、顧客価値をとらえることが多いですが、政治、経済、地球環境などの調査も必要となる場合があります。
=>コト作りの基本は、客観性、中立性です。自分が得意だとか自社が儲けるためとか前提を置いてはいけません、客観的なコト作りで、自分も会社,顧客などステークホルダーがWinWinになるようなコト作りとモノ作りのバランスを検討していく作業をするコトが大事です。手間と時間がかかりますが、モノ作りだけで投資して大損しないですみます。
=>コト作りとモノ作りが一発で合う場合が少ないので、両方で変更をかけながら、微調整をしていく作業がコト作り作業です。私は、コト作りで5年くらいかけて潜ってました、コトとモノのバランスをとりながら市場に合った製品を開発した経験がありますが、一度フィットすると市場で喜ばれる商品となって数十年も商売できるので、5年のコト作りの苦労は報われて成功でした。
●コト作りのためのテクノロジーの選択の重要性は、企業だけでなく産業とか社会に影響を及ぼします。
①事例:電気自動車の失敗、電気自動車は、冬場はバッテリーが弱ってしまって航続距離がスペック通りになりません。世界が寒波に見舞われた時に初めてユーザーが気づいたのですが、トヨタは、ハイブリッドを中心にやっていたので、欧州自動車メーカーほど被害を受けてません。このように、市場に対して、テクノロジーを選択するコト作り判断は、非常に重要です。トヨタは、全てのユーザーが全ての使い方に対して最も良いテクノロジーを選ぶという観点が強い会社だと思います。ですのでBEVでは多くのユーザーが満足できない点を重視してハイブリッドに固執してます。バッテリーの品質が本当に使えるレベルになるまで、コストも下がるまでは、BEVに本格的にしないと思います。乗り遅れたと言われてますが、良いバッテリを手中に居れたメーカーが勝てるので、挽回は可能だと思います。
②事例:自動運転のセンサ技術、テスラは、LIDARを使わずにカメラ画像のAI処理で自動運転を開発してます。しかし、多くのメーカーは、LIDARと各種センサを使ってます。どのコト作りが勝かは未だレース途中ですが、私は、コスト面でテスラの方式が勝てるので、カメラメインになると思います。本来の運転は、人間が五感で運転してますが、8割が目視情報です、1割が聴覚、1割が振動需要だと思いますので、その代替えとしてセンサシステムを組むのが、正しいコト作りだと思います。
③事例:GPSの次世代技術LEOーPNTのコト作り、現在のGPS衛星は、高度が数万kmの位置から電波をだしているので、世界中どこでも捕捉できますが、電波弱いので、電離層、建物の影響を受けます。イーロンマスクが率いるSpaceXが運営するSTAR LINKは、低軌道衛星LEOですので、電波がGPSの数百倍強く地上に届きます。現在は、地球上のどこでも高速インターネットを低価格で提供できるサービスを展開してますが、その衛星群にGPS機能を加えれば、GPS電波が数百倍強いので、都会の高速道の下とか、屋内でもGPS電波が届きますので、位置精度と場所を選ばない新たなGPS技術が誕生します。イーロンマスクは、インターネットサービスにこのGPS技術もつけると思いますので、旧来のGPS衛星など誰も使わなくなります。位置精度は、RTKを使わなくても数cmが当たり前に出る時代になってスマホの位置が屋内のどこに置いてあるかが判る時代になると想定してます。コト作りとしては、GPSがどこでも高精度になった場合何ができるコトが良いのかが問題ですが、イーロンマスクは、テスラ車にこのLEO-PNTを搭載するはずです。位置精度が数cmなので、他のセンサでは無しえない制御ができて安全性が高い自動運転技術になると思います。