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スレッドNo.310

「私はあの子が言うから様子を見に来ただけ」← 別にまゆは何とも言ってないよね?

>武闘派ユキ

「それじゃ(あとはヨロシク~)!」とばかりに大事な大事なご主人のまゆを連れて撤退するかと思いきや、「アイツら(こむぎ&いろは)に獲物を浄化されてなるものか!」とばかりに再び舞い戻ってくるとはねぇ…「貴方たちの邪魔もしない」という言葉とは裏腹に、殺る気マンマンですやんww。


>松本清張賞
>特筆する点のないエンタメ小説

 相変らずの辛口コメントで何より(笑)。この賞に関してはこれまで私もノータッチでしたので、比較的近年の受賞作を幾つか読んでみました。

 ●坂上泉『へぼ侍』2019年度受賞作

 西南戦争をメイン舞台に据えた創作は読んだことが無かったのでそういう意味では新鮮でした。仰る通り王道の教養小説としてまぁまぁ楽しめましたが、主人公に特に実在のモデルは居ないらしいのがちょっと残念。個人的には主人公よりも、後の五・一五事件でお馴染みの犬養毅がまだ20代初めの頃、少壮気鋭の従軍記者として戦場を自在に駆け回る勇姿の方に寧ろ惹きつけられましたね。

 なお御大は作中の重要アイテムとしての西郷札に言及されておられましたが、一方の明治新政府も西南戦争の戦費を賄うために大量の不換紙幣を発行したことでインフレを引き起こしているんですよね。その対策として政府はデフレ誘導の財政政策(いわゆる松方デフレ)を行った結果、税金(地租)を払えなくなった多数の自作農が「自身の労働力を売る以外に生きる術の無い」小作農に転落して労働力の供給源となり、他方多額の小作料収入を得た地主は土地耕作から離れて資本家(いわゆる寄生地主)になる道を選びました。敬天愛人を唱えた西郷隆盛が起こした西南戦争が、日本に弱肉強食の資本主義社会を招来する切欠となったというのは、後世から見ると何とも皮肉な話ですね。

 ●川越宗一『天地に燦たり』2018年度受賞作

 朝鮮出兵と島津家久による琉球侵攻(1609年)とを舞台に、島津・朝鮮・琉球をそれぞれ代表する三名をいわばトリプル主人公に据えた歴史小説。構成としては面白いし、こちらも西南戦争同様あまり馴染みのない題材という意味で目を惹かれたんですが、儒教の「仁」に範を取ったいかにも現代的な倫理観と、弱肉強食の戦国的価値観の狭間で苦悩する主人公らの描写が鼻に付き過ぎて余り楽しめなかったですね。ちょっと前に同じ著者の作品で樺太アイヌを題材に取った第162回直木賞受賞作『熱源』を読んだ時にも同じような感想を抱いたので、まぁこれは著者の癖なんでしょう。私にはちょっと合わなかったですw(苦笑)。

 ●波木銅『万事快調(オール・グリーンズ)』2021年度受賞作
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  自意識過剰な女子高生三人が、(タイトル&表紙イラストからお察し通りの)非合法の同好会活動に勤しむ話。ダークサイドに堕ちた『映像研には手を出すな!』と喩えれば分かり易いかも。今回私が読んだ三作の中では一番文章が粗削りですがその分ヘタウマ的な勢いがあり、物語も作中のラップのリズムさながらサクサク進みます。恐らく作品の舞台は著者の地元だと思いますが、登場人物が揃いも揃って反社会的あるいはクズ・地元愛の欠片も感じ取れないディスりっ振り・ラストはゾンビ映画張りのブン投げエンド…ここまでいろいろ振り切れると嫌悪感を突き抜けて、ある種真っ当な青春小説に思えてくるのが面白い。今回読んだ三作の中では個人的にはイチ押しですねww。

… しかし、松本清張賞なる名を冠するからには謎解きorミステリ要素が不可欠なのかと思ったんですが、三作とも全然そんなことは無かったなあ(苦笑)。


>烏は主を選ばない

 ネタバレにならない程度のことを明かすと、このシリーズは(人物配置が如何にもそれっぽく見えるんですが)BL要素も百合要素も皆無なんですよねw。なお今回のアニメ化では狭い宮廷内での、せいぜい「コップの中の戦争」の部分しか(多分)描かれないんですが、これ以降のシリーズでは八咫烏の住まう「山内」の存在を脅かす宿敵や、人間社会との関わりも描かれるなど作品舞台が大きく広がってゆきます。


>雪哉はワトソン役

 確かに本作ではそういう役回りですね。因みにその後月日が流れて、最新作近辺では山内の宰相にまで登り詰めています。ただその地位も当人が望んだというよりは能力を買われてあれこれ奮闘していたらいつの間にかそうなってしまったという感じですね。しかしながら栄華の代償として大切なモノや人々を少なからず失った結果、今では性格的にすっかり捻じ曲がった老人と化してしまいましたw。作者の雪哉に対するサドっ振りが遺憾なく発揮されているといっても過言ではありませんね。彼に幸せが訪れる日は来るのかな(苦笑)。


>それ以外のGW中の読書その①

 ●野口悠紀雄『マネーの魔術史 ―支配者はなぜ「金融緩和」に魅せられるのか― 』新潮選書2019
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 つい今年の3月に政策の終了が発表されるまで、実にほぼ11年の長きに亘り実施された日銀の異次元緩和政策の是非について、歴史的トピックを引用しつつ詳細に解き明かした本です。「南海泡沫事件」や山師ジョン・ローが仕掛けた「ミシシッピ計画」などへの言及は板谷敏彦『金融の世界史』と同様ですが、事件の概要説明は私には野口氏の著書の方が分かり易かったですね。

◆◆◆

 こうして、ローの魔術は破綻した。フランスの財政危機は解決されず、インフレだけが残った。これは、フランス革命の遠因の一つになったとされる。ローの物語の教訓として、つぎの3つをあげることができよう。

 第1は、巨額の国債を消滅させる簡単な方法などないことだ。
 第2は、金融緩和は、一時的には熱狂を起こせても、経済の実態は変えられないことだ。ローが振りまいたのは「期待」だけだった。それだけでなく、長期的に見れば、金融緩和は改革を遅らせる。…… フランス人がいまに至るまで金(きん)に執着して紙幣を信用しないのは、この時の記憶が残っているからだと言われる。
 第3は、中央銀行の役割だ。すでに述べたように、ミシシッピ会社とほぼ時期を同じくして、イギリスでも南海会社の株価が暴騰し、そして暴落した。ただし、イギリスではインフレにはならなかった。その理由は、イギリスにはすでにイングランド銀行という中央銀行があったので、フランスの場合のように、紙幣の大量発行という事態にはならなかったことだ。
――
 ローが行なったのも、南海会社が行なったのも、国債という形の債務を別の形の債務に変えようということである。…… 「国債を貨幣に変える」というローの方法は、「国債の貨幣化」、または「財政ファイナンス」と呼ばれる。この方法は、現代にいたるまで生き延びている。というより、国が過剰債務を解消するために用いる基本方法となっているのである。…… これと同じことが、現代の日本でも行われている。…… 日銀が民間銀行から国債を買い取れば[いわゆる買いオペ]、国債は国と日銀との貸し借りになってしまう。ところで、日銀は国の機関ではないが、財政的には国と一体と考えてよい。なぜなら、日銀が得た利益は、準備金に充当されるものなどを除き、国庫に納付されるからだ。だから、日銀保有国債について、国が償還した金額や国が支払った国債の利子は、結局は国庫に戻る。つまり形式的に国債の利払いや償還はなされるが、それは国にとって負担にならないのだ。このように、異次元金融緩和によって、巨額の国債が財政通貨当局の負担にならない形に代わっている。…… 債務は残っているが、返却する必要はない。つまり「国債の貨幣化」が行なわれたことになる。。…… これこそが、異次元緩和の最も重要な効果だ。国の負担を軽減するという点では、大きな意味があったのだ。…… この類のシステム(つまり、人々をだますための仕組み)は、複雑なほうがよいのだ。… このシステムの最も肝心なところは、人々の信頼をつなぎ留めておくために、紙幣の発行額を適切にコントロールすることだ。ローのシステムの失敗は、システムそのものが持っていた欠陥ではなく、その運用を誤り、図に乗って紙幣発行量を増やし過ぎたことにあったと考えられるのである。((本書 p.126~135より抜粋引用)
――
 異次元緩和政策導入で確認できたのは、マネーは人々の目を欺くことはできるが、リアルな経済問題を解決する力は持っていないことだ。日本は、超高齢社会という、これまで世界のどの国も経験したことがない事態に直面する。年金や高齢者医療費を中心として社会保障費はとめどもなく膨れ上がるが、それを支えるべき財政的な手当てはなされていない。また、労働力人口が激減する半面で、医療・介護に対する需要は増え続ける。そうした条件下で経済活動をいかに維持できるのか、見通しがつかない。事態はこのように深刻だが、日本人の危機意識は、きわめて希薄だ。財政が破綻するのはほぼ確実だが、市中にあった国債を異次元緩和で日銀が買い上げてしまったため、財政負担は意識されなくなってしまっている。われわれは、ただ騙されているだけのことだ。(同前、p.320より引用)

◆◆◆

 経済を円滑に回すためには、政府が演出する「幻想」に国民が(知ってか知らずか)乗っかる必要も時にはあるが、それは国民が政府を信頼している(=政府に騙されている)間に実体経済が追い付いてこそ初めて意味をなす…という、結局は至極当たり前の結論に落ち着くということかな(笑)。
 

>それ以外のGW中の読書その②

 ●ジョーン・G・ロビンソン『思い出のマーニー(上・下)』
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 ジャンルは児童文学ですが、ラストの急展開などを鑑みるに内容的にはむしろ大人向けではないかしら。ビルドゥングスロマンの佳品ですね。イマジナリーフレンドものとも時間旅行ものとも取れる、半世紀以上も昔の作品とは思えない著者の描写力の巧みさに唸らされます(作者は違いますが、同じく英国の児童文学の傑作『トムは真夜中の庭で』を思い出しました)。今回『100分de名著』で紹介されたのが読書の切欠になったため仕方が無かったのですが、ネタバレ無しで読みたかったというのが正直なところです(苦笑)…因みにジブリの映画の方は未見です。


>ユーフォ

 サラっと描いていますけれど、これかなり重度のシスコンですよね?こんな地雷を抱えた後輩は私なら端から願い下げですが、鋼メンタルで名高い金剛石ちゃんならまぁ無問題か(笑)。そして久美子新部長の相変わらず卓越した人たらし&調整能力には脱帽ですね。

編集・削除(編集済: 2024年05月03日 14:32)

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