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スレッドNo.339

確か『S☆S』の舞も集中して絵を描いている時は周囲が見えなくなっていましたっけ

 EDクレジットにまゆの元友人の名前(知覧友眞)がわざわざフルネームで載っていますね。後々再登場するための布石かな?
 それは兎も角、結果的に無視している形になっているにしても、目の前で自分への贈り物の刺繡をしている訳ですから友眞さんもまゆの性向を理解してあげても良いように私なんかは思うのですが…まぁ未就学女児目線からすると無理な話なのかもしれませんね。


>ユキが他者を信頼することを学べば、それはそのまままゆへの理解にもなる。まゆが友達を信頼していること、もう一人ぼっちになることはないこと、自分もまゆ以外との関わりがあること。そのようにして少しずつ負債の肩代わりを減らしていく。

 今回のエピソードは大人向けの創作だと「一足先に成長の階段を着々と上りつつあるまゆのことを、一人取り残されたユキが裏切り者呼ばわりして凶行に及ぶ」という拗らせまくった展開になりかねないところですが(笑)、その点未就学女児向けの教育アニメなので安心して観ていられますね。


>犯罪捜査の心理学

 読了しました。前書きにもある通り、創作の分野では快刀乱麻を断つ活躍ぶりが描かれる「プロファイリング」なる捜査手法が「残念ながらテレビのようにかっこよいものでも、犯人を確実に言いあてられるものでもない、むしろ地味で着実な研究によってつくられている知識体系」であることがよく分かりました。

 個人的に興味を惹かれたのは、「一つの場所で一度に複数の人間を殺傷する」大量殺人事件に見られる共通点を取り上げた第5章でした(↓)。

◆◆◆

 大量殺人犯というのは、複雑で誰もが考えつかないような行動をしているように思われますが、実際は、かなり典型的で画一的な行動をしているのです。…… つまり彼らは、絶望の中でもう生きているのがいやになっているのです。自〇したいのです。しかし、自分だけが死んでしまっては収まらないなにかがあるために、自分を自〇に追いやった原因(カテゴリーとしての敵)に復讐してから、自分も死ぬ(殺される)、ということなのです。また、死ぬからには、恨んでいる相手だけでなく、自分の愛している相手とともに死のうとも考えます。これは一人で旅立つことに対する恐怖もあるのでしょうし、こんなたいへんな復讐をすることによって、残された者が、傷つき、苦しむのを防ぐためでもあります。心中と復讐の二つの側面をもった殺人が、大量殺人ということができるのです。

 これらの事件が発生すると「犯人はなぜ最初に、愛する人(ペット)を殺したのか」とか「なぜ最後は自〇したのか」「なぜ罪もない人を殺したのか」などについて、テレビに出て来る「犯罪心理学者」やコメンテーターがいろいろな憶測を語ります。しかし、これらはいずれもこの種の犯罪における典型的な要素です。個々の事件について、なんらかの理由や原因をこじつけて説明する前に、この種の犯罪に共通する動機や行動パターンをしっかり把握することが重要でしょう。(本書p.161~163より引用)

◆◆◆

 今後も同種の事件が起こるたびに、各種メディアやSNSでは「犯人の謎多き心の闇」を巡って、にわかコメンテーターらが嬉々として、したり顔で自説を開陳するのを目にすることになるんだろうなぁw(毒)。


>最近の読書

● 君塚直隆『貴族とは何か ―ノブレス・オブリージュの光と影―』新潮選書2023
 https://amzn.asia/d/0dDEdRZX
 著者はだいぶ昔に、以前の板で私がプレゼンした『悪党たちの大英帝国』と同じ人です。一応洋の東西を問わず貴族全般の成り立ちを広く取り上げてはいますが、西ヨーロッパ、それも著者の専門の英国貴族に記述の大半が割かれているのはまぁ当然でしょうか。大枠としてはあの有名な「絶対的権力は絶対に腐敗する」の格言通り、想定通りの内容でしたが、どうも英国貴族だけは唯一の例外に属しているようですね(↓)。

◆◆◆

 近世以降のフランスに代表されるように、それまでは王(皇帝)を支えるとともに、国民(領民)にとっても「徳を備えた最良の人々」として、政治や経済、社会や文化を託すべき存在であった貴族たちは、それぞれの国や地域の状況によって多少の差はあったものの、いつしかその「徳」を忘れ、「公共の福祉」のために全力を尽くすべきところを「私利私欲」に溺れ、やがては中産階級さらに労働者階級からも愛想を尽かされて、歴史の表舞台から姿を消していったのである。

 ところがここに例外となった貴族たちがいた。ヨーロッパ大陸の貴族たちがこのような運命をたどっていったなかで、島国イギリスの貴族たちは奇跡的に第一次世界大戦後も生き残り、さらに第二次世界大戦も乗り越え、21世紀の今日においても、世界で唯一現存する「貴族院(House of Lords)」まで維持しているのである。大陸の貴族たちとほぼ同じような、政治・経済・社会的な状況を経験してきたはずなのに、なぜイギリス貴族だけが生き残ったのか。(本書 p.133より引用)

◆◆◆

 この問い掛けに対する解答として君塚氏は一言「それは税金だ。」と明快に言い切ります(↓)。

◆◆◆

 貴族の後退が顕著に見られたフランスとは異なり、イギリスでは貴族は中央と地方の双方で相変わらず政治権力の中枢に居座り続けていた。それは冒頭の言葉にもあるが、イギリスでは貴族が統治することを許してもらうために最も重い公共的負担を引き受けたからであり、それは具体的には「税金」であった。…… フランスでは国庫の半分近くを直接税が占めていたにもかかわらず、貴族や教会は免税特権に守られていた。これに対してイギリスでは、貴族は直接税も間接税も支払わされていた。…… イギリスの貴族は「特権(免税権など)の代わりに権力(統治権など)を手に入れ」るのがすでに長い慣例にもなっていたのだ。…… 彼らが課税負担を担っていたがゆえに、貴族による「支配」に、一般庶民が強い不満を抱き、ひいては大革命にいたるという事態はイギリスでは見られなかった。イギリスには「市民革命」が生じた歴史はないのである。(同 p.136~137より)

◆◆◆

 そうなると、じゃあどうして英国貴族は君主(政府)からの課税要求を甘んじて受け入れたのか?という問いが新たに生じる訳ですが…ここからが何度読み返してもどうにも分かりにくいのですが(苦笑)、英国では(分割相続が基本だったドイツ・フランス・ロシアなどとは違って)中世以来「長子相続制」が取られたため所領が分散することなく、少数の貴族が巨大な土地を保有する「大地主」として留まり続けた(p.148~9)ことを踏まえつつ、以下の記述がその答えになっているように思われます(↓)。

◆◆◆

 [1688年の「名誉革命」の翌年に出された]「権利章典」により、「議会の合意のない法律の停止は違法である」ことが明確にされ、「議会の許可なく、王は税を徴収できない」ことになった。これ以後のイギリスでは貴族たちに直接税が定期的に課税され、そのかわりに議会が定期開催されるようになる。…… 貴族が定期の直接税に同意する気になったことで、[英国]議会の性格は、危機に対応するためだけに召集される組織から、通常の国家運営のなかで役割を果たす集会へと転換することになった。…… [それに対し]ヨーロッパ大陸の身分制議会には定期的に開催できる権利はなく、議会は通常国王の裁可を得られた時だけ開かれた。フランスでは、革命勃発の直接の引き金となった全国三部会の開催(1789年)は、実に174年ぶりに国王が招集したことで実現できたのである。(同 p.159より)

◆◆◆

 「地方の事情の分からぬ王に好き勝手させてたまるものか。国費となる税金は負担してやるから、代わりに国政に参加する常設の権利をよこせ」― つまり国家運営に参画するための取引材料として税金を用いたということのようです。これを当時の英国の下層階級から見ると、確かに貴族は、例えばエンクロージャー(囲い込み)に代表されるように「抑圧者」だったかもしれませんが、同時に「おらが地元の利益代表」でもあったということなんでしょう。

◆◆◆

 イギリス的貴族制度の傑作は、次の二点である。すなわち、それは非常に長期に亘って共通の敵が君主であることを社会の民主的諸階級に信じさせていること、そしてそういうわけで貴族が民主的諸階級の主たる敵として留まる代りに、民主的諸階級の代表となることに成功していることである。…… イギリスでは、18世紀に、税の特権を享受しているのは貧民である。フランスでは、逆に富者である。イギリスでは、貴族階級は統治することを許してもらうために、最も重い公共的負担を引き受けている。ところが、フランスでは、貴族階級は統治権を失ったことのくやしさを自ら慰めるために、最後まで免税権を留保したのである。
(仏の思想家 アレクシ・ド・トクヴィル『旧体制と革命』1856年発表より・本書p.135に引用)

◆◆◆

 そういや磯田道史氏は著書『武士の家計簿』の中で「江戸時代のような地位非一貫性(権力・威信・経済力などが一手に握られない状態)の社会においては身分による不満や羨望が鬱積しにくく、従って革命はおきにくい。」と述べておられましたね。このように「地元(知行地)との繋がりが薄く、かつ極めて経済的に苦しかった(=商人の方が遥かに金持ちだった)」江戸時代の武士階級とは全く違った原理で、英国では「市民革命が起きにくい」土壌が形成されていたみたいです。勉強になりました。

●スチュアート・リッチー『Science Fictions あなたが知らない科学の真実』矢羽野薫訳 ダイヤモンド社2024
 https://amzn.asia/d/0a0wctya

 500ページ弱と分厚い本ですが、全部読まなくてもリンク先の「出版社より」のアオリで大体の内容は摑めます。Amazonのコメにもある通り一般向けの書物というよりは研究者に向けての提言と言った趣きでしょうか。

 あの有名な「スタンフォード監獄事件がイカサマ(本書p.54~55)」なのはどこかで耳にして既に知っていましたが、御大がプレゼンされたマシュー・ウォーカー著『睡眠こそ最強の解決策である』2017発表のことも「科学的な誇大広告が自己啓発的な語り口にとどまらず、破滅的な結果をもたらし得ることを自ら例示している(p.270)」と手厳しく断罪しています― どんな分野であれ専門家の手になる「画期的な科学的知見」なるものを初めから鵜呑みにせず、少し間を置いて評価する必要性があるのかなぁ、という懐疑的な気持ちに改めてさせられた読書でした。


>ユーフォ
>原作では久美子が選ばれると聞いてたけどアニメで変えた
>真由の扱いが微妙だったって話だからそこの部分テコ入れした感

 原作だと部員による決選投票も無くストレートに久美子が選ばれて最後のオーディションが終わるので、「実力主義」を唱える久美子と「エンジョイ勢」真由との思想対決も「消化不良のまま」終了してしまいます。今回のアニメ化では真由が「オーディション辞退」を執拗に主張する「真の動機」が何なのかを“性格の悪い“久美子の口から語らしめることで、原作では割とあっさり流されていた真由のキャラに深みを与え、同時に久美子の部長としての人間的成長をも感じさせるものとなっていましたね。久石奏・高坂麗奈・久美子のアニオリのボロ泣き含めて、これは良改変だったなと個人的には思いました。


>あせびは登殿前からかすけと連絡を取り合っていて~(中略)~桜花宮に呼びつけた。……っていう流れでいいの?
>結果として姉を貶め、桜花宮に混乱を持ち込み、自分の手を汚すことなく関係者の口を封じた……って状況

 はい、キャラ名がすももでは無くて早桃(さもも)である点を除けば、全く御大のご指摘通りです(笑)。
 嘉助(かすけ)は原作でも伏線無しに唐突に登場する ― しかも東家一の姫に乱暴狼藉を働きながら、その後罰せられた形跡が無く自由に行動出来ているのも何とも不思議 ― ので、宮廷ファンタジーとしては兎も角ミステリものとしては正直アンフェア極まりないと言っていいと思います(Amazonの低評価コメの中に「広告も、松本清張賞もあてにならん!金返せ!」とあるのもそのためですね。まぁその後の受賞作を見るに、松本清張賞自身ミステリとは余り関係無いみたいですがw(苦笑))。

 なお今回の描写で分かるように、あせびはいわば「天真爛漫ド天然サイコパス」で、権謀術数渦巻く宮廷を、本人に策を弄しているとの自覚なく何やかんや乗り越えて、最新刊『望月の烏』ではちゃっかり大紫の御前(要するに現皇后)の地位に収まっています。最新刊「だけ」を見ると、あせびが「巧まずして功成り名を遂げた世間知らずのお姫様」に見えてしまうのが、人外の存在に出くわしたかのような恐ろしさを感じますね。

 あと全然関係ありませんが、年のせいなのか最近映画などの長めの映像作品を視聴するのがしんどくて仕方が無いので、御大に色々お勧め頂いても中々視聴出来ないのが誠に残念です(涙)。

編集・削除(編集済: 2024年06月25日 00:48)

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