母の日エピソードと言えば
やっぱり『ハートキャッチ』14話のななみ回を思い出しますね。物故されているかご存命かの違いこそあれ、どちらも記念日に相応しく母親にスポットの当たった良回でした。
>自分が伝える側でありつつも伝えられる側である構図
キュアアイドルなんだけれどキュアエール要素もあるっていうのに欲張りセット感がありますね(笑)。
>今週の読書
●土田 陽介『基軸通貨 ― ドルと円のゆくえを問いなおす』筑摩書房2024
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基軸通貨(キーカレンシー)とは、国際通貨または決済通貨(ハードカレンシー)の一種だが、うち世界で最も利用されている国際通貨こそが基軸通貨である。そして基軸通貨の条件は、
① その通貨を発行する国が圧倒的な国力を持つこと、
② その通貨を発行する国が高度な金融市場を有していること、
③ その国の通貨の交換量が突出して多いこと
に集約される。(本書p.18より)
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経済に詳しくなくても、そりゃまぁ当たり前の話だよなぁという論点から初めて、結果的に普段の生活で何となく覚える様々な疑問に的確に答えていく巧みな話運びには驚かされました。
著者によると第二次大戦以降、上記の基軸通貨と呼び得る三つの条件全てを備えているのは米ドルだけで、不安要素はあるけれどもこの地位はここ暫くの間(少なくとも2030年まで)は揺らぐことが無いだろう、とのことでしたね。ソ連崩壊前のルーヴルにせよ、バブル期の円にせよ、現在のユーロや人民元にせよ、いずれかの条件を甚だしく欠いている(欠いていた)ため米ドルの後継にはなり得ない(なり得なかった)、ということのようです(以下、思い付くままにへぇ~と思った箇所を列挙しますね(↓))。
・ウクライナ侵攻を契機として、ロシアでは急速なドル離れと人民元化(=中国経済への隷属)が起こりつつある(ロシアの外貨準備の過半が人民元。そして人民元は中国との貿易の決済でしか使用出来ない)。
・先日私が言及したブロック経済の可能性について論じていると思われる箇所も登場。脱ドル化を目指してBRICS内では共通通貨構想も出ているみたいですが、文化背景が似ているEUですら足並みが揃っていない現状からもお察しの通り、今のところ具体的進展はなさそう。
・国内の経済取引の主導権を自国に取り戻す、いわゆる「脱ドル化」の試みとして、国家規模で暗号資産(仮想通貨)を用いた事例もあったが、いずれも失敗(例:エルサルバドルのビットコイン・ベネズエラの暗号資産ペトロ)。唯一脱ドル化に成功した事例はメキシコで、上記のように基軸通貨変更といった「一発逆転」では無く、健全なマクロ経済運営を愚直かつ地道に行い続けたことによるもの。
・例の黒田総裁時の「異次元緩和」と呼ばれたゼロ金利・マイナス金利政策の後遺症で、日本の公的債務残高(ほぼほぼ国債費)が対GDP比250%強にまで膨れ上がっている。ここ数年米ドルはインフレ対策のため金利引き上げに動いているが、日本は金利上昇に極めて及び腰。結果日本円が売られ円安ドル高が進み、輸入品の値段が上がり物価が上がり続けているのはご承知の通り。
・じゃあ日本も米国に対抗するために金利を上げればいいのでは?→ それをすると国債償還に伴う支払額も増加するため財政が更に不健全化する&日本が長年のゼロ金利政策に慣れ過ぎてちょっと金利を挙げただけで経済活動に大打撃となる(企業が事業拡大に消極的になる・個人消費が冷え込むetc.)。要するに公的債務が大き過ぎて、米国の「自国ファーストな」マクロ経済運営に対する十分な対抗処置が取れなくなっている。
・しかし米ドルも盤石ではない。現に2023年の米国の財政赤字は、プラザ合意を成立させた1980年代の時期よりも悪い。公的債務残高も(日本ほどでは無いにしても)GDPの120%にまで膨張(2020年以降)していることに加え、将来的な人口減少による経済成長鈍化への懸念、そしてトランプ政権下での同盟国すらも経済制裁の対象とするスタンスから生まれる対米不信などが、米ドルを現在の基軸通貨の地位から追い落とす可能性は十分ある。
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本書は、基軸通貨としての米ドルの位置づけを問い直すことをその狙いとするものだ。それと同時に、新興国を中心に進んでいるドル離れや脱ドル化と呼ばれる現象に対して、独自の評価を与えることを目標としている。…… 本書での検討を要約すると、米ドルは当面の間は、基軸通貨として機能し続けることになる。米ドル以外に、基軸通貨としての条件を満たす国際通貨が存在しないためだ。とはいえ、その条件が満たされなくなれば、米ドルの基軸通貨としての位置づけは揺らぐことになる。とりわけ、今後も米国のマクロ経済運営の健全化が進まなければ、米ドルの基軸通貨としての位置づけは低下を余儀なくされるだろう。
他方で、米ドルが基軸通貨であり続けようと、あるいは新たな基軸通貨が生まれようと、日本を含めた圧倒的多数の国は、基軸通貨を発行する国に対して受け身の存在である。そうした圧倒的多数の国は、基軸通貨を発行する覇権国を頂点とする世界経済体制に組み込まれ続ける。そして、基軸通貨を発行する覇権国の存在を念頭に、健全なマクロ経済運営に努めることができる経済だけが、為替レートを安定させることができるのである。果たして、日本にそれが可能だろうか?(本書 p.214 終章 基軸通貨と日本円 より引用)
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この種の本にしては門外漢への敷居が低く、著者の主張が明確で分かり易かったですね。出版年もつい半年前ですし、久し振りに当たりを引いた読書でした。おススメです!
>大抵の陰謀論は主語がデカすぎる。それは人間を神格化するのに等しい
(↑)AIも進歩したものですねぇ。上手く纏めるなぁ(笑)。
陰謀論に関しては2024年3月4日 18:17分の拙投稿にて、日本中世史がご専門の呉座勇一氏の文章から引用したことを思い出しました。AIの指摘とほぼ同様の内容ですが、以下加筆・修正を加えて再掲しますね(↓)。
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……では、そもそも陰謀論とは何だろうか。
もともと「陰謀論」という言葉は新語なので、明確な定義はない。本書では「特定の個人ないし組織があらかじめ仕組んだ筋書き通りに歴史が進行したという考え方」と定義しておく。言い換えるなら、「陰謀の発案者は100%完璧に未来を見通すことができる完全無欠の天才(超能力者?)である」という発想が陰謀論の根底にある。
南京虐殺事件の犠牲者数の検証などの昭和史研究で著名な秦郁彦氏によれば、陰謀論は以下の特徴を有するという。
①「因果関係の単純明快すぎる説明」:ある出来事が起こった時、実際には複数の要因があるのに、一要因に単純化して説明する(例:対日最後通牒であるハル・ノートの起草者はソ連のスパイだった説)。
②「論理の飛躍」:状況証拠しかないのに、自分の思いだけで「きっとこうするだろう」、「こうであったにちがいない」など憶測や想像で話を作っていく(例:ロシア革命を画策したのはユダヤ人だった説)。
③「結果から逆行して原因を引きだす」:「事件によって最大の利益を得た者が真犯人である」というテクニックは陰謀の犯人を捜す上でそれなりに有効である。だが、やり過ぎると珍妙な陰謀論になる。…… 後世の人間は結果を知っているから、「勝者は明確な目標を設定しており、その目標を実現するために全てを計算しており、事前に立てた作戦通りに行動していたにちがいない!」と考えがちである。……しかし、当時を生きていた人は未来を知らないので、試行錯誤するのが普通である(例:日中戦争は日本と蒋介石を争わせるために中国共産党が仕組んだ説)。 (呉座勇一『陰謀の日本中世史』p,308~314より抜粋引用)。
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あと呉座氏は続けて「どうして陰謀論は無くならないのか」についても述べていますので、その部分も引用しますね(↓尤もAIならもっと上手く纏めるかもしれませんがw)。
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陰謀論者は挙証責任を批判者側に転嫁することが多い。分かりやすい例を挙げると、UFOはいるという人間が、いないという人間に対して「UFOが存在しないということを証明せよ!」と迫るのである。俗にいう「悪魔の証明」である。陰謀論が100%成り立たないことを証明するのは非常に困難なため、陰謀論はしぶとく生き残る。…… 歴史家は限られた現存資料を通じてしか過去に接近することができない。そして当然のことながら、残されている史料より失われた資料の方が遥かに多い。よって、どんなに綿密に構築された歴史学説にも弱点はある。その弱点を突くだけなら以外に簡単なのである。(同前、p.316~318より)
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>カナダへのディスりがほぼない。
確か『2050世界人口大減少』でも、カナダ人の著者が自国の移民政策を手放しで賞賛していたように覚えています。カナダは少なくとも対外的には愛国心の表明が求められるお国柄なんでしょうかw?
>証券口座のセキュリティ対策
私の場合NISA口座は楽天証券で開設しているのですが、来月6月1日から二段階認証が義務付けられたみたいです(私は既に設定済)。ただ出金制限の項目はまだ実装されていないんですよね~。ゆうちょダイレクトが数年前で既に二段階認証・指紋認証・出金限度額の設定等が必須だったことと比較すると、楽天は割とセキュリティ対策が遅れているという印象は受けますかねぇ…まぁあまり厳格にし過ぎるとどうしても使いにくくなるので、痛し痒しではあるんですが。
>「お嬢様っぽい振る舞いをする」こと
(↑)後の引用でも登場するように、当時は「良家の子女にとっての職業訓練」の場だったのではないかと思います。「金持ちの独身男性の心を射止めるため、教養や芸事を身に付けることが何よりも求められた時代」には当然の所作だったのでしょうけれど、今や超名門校を名乗る学園ファンタジー作品の一要素と化してしまいましたね。
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…19世紀の(イングランドの)一般的な女性にとって、社会的地位と経済力を確保するには、通常、結婚という選択肢しかありませんでした。中産階級以上の女性にとって、淑女としての品位をどうにか保てる職といえば、世紀末になって教職や公務員、看護職などの地位が上がるまでは、文筆業か女家庭教師くらいでした。何と言ってもいちばん高く評価されていたのは、結婚して主婦になること。妻が「家庭の天使」であるべきだという価値観が徹底していた19世紀において、結婚とは女性にとって、職業と同義だったとも言えるのです。(NHKテキスト:廣野由美子100分de名著「ジェイン・オースティン『高慢と偏見』」p.22より引用)
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>ジャーナリストなら時間かけて口説き落とせよ
ほんそれ。『ルポ・トランプ王国』の中の人の取材力(コミュ力)を見習ってほしいですね(毒)。
>ドラマとしては、お互いにソリの合わない義理の母子が、世捨て人やってる大叔父さんの下で和解する話
へぇ、そんな物語なんだ。吉野源三郎の原作(数年前に読んだ)からは随分改変されているんですね。パヤオ氏独自の解釈を延々と観させられるのかしら?だとすると正直余り食指が動かないかなぁw(苦笑)。