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スレッドNo.485

自身が所属するテロ組織への忠誠を引き続き誓うか、推しへの愛を貫き平凡な一市民として生きることを選ぶか

 八百屋お七から転じて、今回はポーランド映画界の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の傑作『灰とダイヤモンド』を彷彿とさせる内容でした。初めて視聴したのは中坊の頃、NHKの『世界名画劇場』を通じてでしたが、ラストの長尺での「ジレンマを抱えた主人公が、街外れのゴミ捨て場で独り絶命するシーン」に心を大きく揺さぶられたのを覚えています。まぁ映画とは違い(今のところ)カッティーは悲劇的な結末を免れられそうではありますが。


>身をやつす

 生成AIが広く普及する以前に書かれたと思しき記事を見つけました(↓)。
 【「身をやつす」とは?意味や使い方をわかりやすく解説! – スッキリ】
 https://gimon-sukkiri.jp/enthrall/

 もともとは上記記事の意味②「目的があってわざと目立たない格好をしている際に使う(=みすぼらしい格好をしていても、単に貧しくなったからみすぼらしい格好をしているという場合には使うことは出来ない)」だったけれど、意味①「みすぼらしい恰好になるほど何かに熱中する」に含意される、“(意図していた訳でなく)結果的にみすぼらしくなってしまった”ニュアンスが追加された結果、生成AIの指摘する「(広義には)落ちぶれて貧しい暮らしをするようになる」意味が新たに生まれたという経過を辿っているように思いますね。まぁ言葉の正誤なんてものはその時代時代の多数決によって決まるものですから、生成AIが送り出す文章は単語やイディオムがその時点の世間一般でどのように使用されているかを色濃く映し出すものになっているのかもしれません。


>どうやって(AIの)真偽を見定めるんだ?
>行き着くところは宗教

 先日、自分が真偽をある程度判定できるテーマで何度か生成AI(無料版Google Gemini)を試してみたんですが、割と精度の高い返答がなされたかなぁという印象でした…まぁでも自分の詳しくない分野でAIの記述を鵜呑みにするつもりは今のところは無いですね。所詮人間のすることに完全はありませんからw(←「この道」スタンスからの宗教的発言)。


>AI誘発性心理反応

 そういや小学生の頃『ドラえもん』のひみつ道具で、「どんな発言・振舞いでも全肯定してくれるロボット」が確か登場していたっけなぁ…と思ってさっきググってみたら、既に記事として纏められていましたねw(苦笑)。星新一作品とかもそうですけれど、天才と称される方々による「人間なるものへの洞察力」の深さを改めて感じずにはいられません。
 https://togetter.com/li/2546000


>読んだ感想は「中途半端」
>お前の感想なのか、一般論なのか、説教なのか何なのかわからない

 数年前に買って読んで、先日読み返しもしたんですが、あの時も今も御大と同じ感想を概ね私も抱きました(笑)。例えば貨幣(通貨)の起源を「倉庫に預けた余剰農作物の預かり証」だと断定していますが、少なくともマルクス『資本論』における説明とは大きく異なっていたので不思議に思っていたんですよねぇ。

 因みにGoogle Geminiの回答は以下の通り(↓)で、個人的にはこちらのほうがよっぽど納得感が高かったです。

◆◆◆

【質問】 貨幣の起源については幾つかの学説がありますが、それらについて説明してください。
【回答】 貨幣の起源については、経済学や歴史学の分野で様々な学説が提唱されています。主な学説は以下の通りです。

1. 商品貨幣説(物々交換仮説、自然発生説)
 • 概要: この学説は、貨幣が物々交換の不便さを解消するために、自然発生的に誕生したと考えるものです。人々が多様な商品を交換する中で、「誰もが欲しがり、価値が安定しており、分割や携帯が容易である」といった特性を持つ特定の商品(例:穀物、家畜、布、後に貴金属である金や銀など)が、交換の媒介物として選ばれるようになったという考え方です。
 • 代表的論者: アダム・スミス、カール・マルクス(ただし、マルクスは商品貨幣が発展して信用貨幣に移行すると考える)、カール・メンガーなど。
 • 特徴: 貨幣がその素材自体に価値を持つ「商品」であるという点に重点を置きます。

2. 信用貨幣説(負債説、国家貨幣説、貨幣国定説)
 • 概要: この学説は、貨幣が物々交換から自然発生したのではなく、むしろ社会における「負債」や「信用」の関係から生まれた、あるいは国家などの権力によって「法制」として定められたものと考えるものです。古代の負債の記録や、神殿や国家が発行する負債証書が貨幣の原型であるとされます。
 • 代表的論者: ゲオルク・フリードリヒ・クナップ(「貨幣国定説」を提唱)、A. Mitchell Innes、ジョン・メイナード・ケインズ(信用貨幣説に親和的)、現代のMMT(現代貨幣理論)など。
 • 特徴: 貨幣がその素材自体の価値ではなく、発行体や社会の信用によって価値を維持するという点に重点を置きます。例えば、政府が税金の支払いに特定の貨幣を要求することで、その貨幣に価値が与えられるという考え方もあります。

3. 社会契約説(人為的起源説)
 • 概要: 貨幣は、人々が社会的な合意や約束、あるいは法律や慣習に基づいて人為的に作り出した制度であると考える学説です。物々交換の不便さや、社会における公平な交換の必要性から、人々が共通の価値尺度として貨幣を作り出したとされます。
 • 代表的論者: 古代ギリシャのアリストテレスは、貨幣が人々の「申し合わせ」によって創造されたと論じています。
 • 特徴: 貨幣の起源を、人間の合理的な選択や社会的な取り決めに求める点にあります。

その他の視点
 • 原始貨幣説: 特定の地域や時代、民族において、独自の「原始貨幣」(例:貝貨、石貨、塩など)が存在し、それが貨幣生成の起源になったとする考え方です。これは商品貨幣説の一種とも見なせますが、より多様な形態の貨幣の存在に着目します。
 • 多機能進化説: 貨幣が交換手段、価値尺度、価値貯蔵手段といった複数の機能を備えるに至った過程を、社会の発展や複雑化とともに説明するものです。特定の機能から他の機能が派生したというより、様々な要因が複合的に作用して貨幣が進化してきたと捉えます。

 これらの学説は、それぞれ貨幣の異なる側面や歴史的段階に焦点を当てており、どれか一つが完全に正しいというよりも、貨幣が多様な背景と過程を経て形成されてきたことを示唆しています。現代の貨幣システムは、商品貨幣的な側面(歴史的な貴金属との関連性など)と信用貨幣的な側面(銀行預金や法定通貨など)の両方を持ち合わせています。

◆◆◆

 この回答に拠ると著者バルファキスの立場は2.ということになるようですね。誰も歴史的経過を目撃した訳ではないですからどれか一つの説に断定できるはずも無く、本書が「初学者への啓蒙書」を執筆目的としている以上、両論併記しないのは却って不誠実なのではないかと思いました。


>『黒い匣 ~』追加感想

 ・ ギリシャ国民に対し半ば恫喝的に忍従を求めるEU債権団の追加融資協定&財政再建案は吞めません。私達が十分実現可能な債務再建案を作ったので一度検討してみてください。→ 関連組織内で「たらい回し」にされた挙句、結局一顧だにされず。
 ・ 国民投票を実施した結果、60%超の国民が協定に反対しています。何卒検討宜しくお願いします。→ 「選挙によって経済政策を変えることは許されません(p.256)」とやっぱりガン無視される(なのに実現可能な対案は全く示されない)。

 各組織の幹部らとオフレコで話す分にはギリシャに割と同情的なコメントも多いんですが、オフィシャルな立場だと揃いも揃って強硬姿勢に転じるのは、タテマエとホンネとを巧みに使い分ける権力者あるあるですね…まぁ全員「ラスボス」たるメルケル(当時ドイツ首相)の顔色を窺っていたからこそ、そう振舞わざるを得なかったみたいですがw(苦笑)。

 結局著者はEUの圧力に屈して財務大臣を辞任、泣く泣く追加融資協定を受け入れたギリシャは賃金&年金カット・増税など国民に更なる負担を強いたものの2018年にはめでたく完済したとのこと。その間2016年に英国がまさかのEU離脱(ブレグジット)を議会で可決したとの報道にすっかりかき消されてしまって、本書で記されるギリシャを巡る一連の騒動も今や「歴史の1ページ」になってしまった感があります。

 取り敢えず結果オーライということみたいですが、当時ギリシャがEUを離脱すればそれはそれでEUが大ダメージを喰らうことが見えていただろうに、ここまでメルケル(の意向を受けたお偉方ら)が頑なに著者サイドの提案を拒絶し続けた理由が正直良く分からないかなぁ。ギリシャの言い分を特例として認めてしまったら最後、他のEU圏の弱小加盟国(スペインとかポルトガルとか)らが一斉に反旗を翻しかねないとでも考えたんですかねぇ…あるいは経済合理性の追求とは無縁の「大国のメンツを潰しやがって」的な、極めて人間臭い理由によるものなのかもですね(笑)。

 なお本書の感想は無いかと色々とググってみて私がそこそこ納得がいったのは、神戸大学の経済学部教授を名乗る方によるコレ(↓)でした。そこでも指摘されている通り、本書は全体的にどことなくカフカっぽい「話の通じなさ・不条理さ」に満ちた、ヨーロッパの一つの現実を切り取っているように思いました。
 https://kaikaji.hatenablog.com/entry/2019/05/12/235432

 最後に、著者の主張に一向に耳を貸そうとしない当時のドイツの財務大臣が、交渉の中で著者に一瞬「ホンネ」を垣間見せたエピソードを記して、感想を終わります。

◆◆◆

 「…… しばらくの間、私たちが大臣だということを忘れましょう。アドバイスをください。何をなすべきかではなくて、アドバイスをおっしゃってください。…… もしあなたが私の立場だったら、あのMOU[=対ギリシャ改革案リスト]に署名しますか?」

 私は、彼がいつもどおりの無意味な議論を付けて、この状況ではほかに方法はないと答えるだろうと予想した。しかし違った。彼は窓の外に目をやった。その日は、ベルリンにしては暖かい晴れた日だった。彼は私に向かい、衝撃の答えを口にした。

 「一人の愛国者として、ノーです。あれは人々のためになりません」 

 …… その日、私が別れを告げようとした時、そこにいたのは手段を選ばない独裁者ではなかった。そこにいたのは、表向きはヨーロッパでほぼ最高の権力者でありながら、自分が正しいと分かっていることを実行するにはあまりに無力だと感じている、気落ちした男だった。偉大な悲劇作家が教えてくれたように、最高の権威とまったく無力の組み合わせほど、悲惨なものはないのだ。(p.437~438)

◆◆◆

>今週の読書
 ●社會部部長『あの国の本当の思惑を見抜く地政学』サンマーク出版2025
 https://amzn.asia/d/dhoQIAk

 この方の動画はこの板でも何度か取り上げられましたね。これまで地政学関係の本は何冊か読んで来ましたが、本書前半における主張の明快さ・内容の纏まりの良さでは類書の中では群を抜いて優れているように思います。私にとっては既知の事柄も多かったですが、「勝率6割。「最強の国」アメリカは実は弱い(p.99)」とか「北朝鮮の真の恐ろしさは軍事力ではなく、行動が予想できないこと(p.63)」とかは興味深い視点だと感じました。

 一方個別案件を取り上げた後半は断言口調がやや鼻に付き、また独自研究と思しき主張も多めのように映りました。確かに参考文献は豊富に記載されてはいるんですが、大半が英文ソースによるものなのでファクトチェックがしづらいのはマイナスポイントですかねぇ(苦笑)。まぁもし図書館にあれば前半だけでも一読して損は無いかと思います。

編集・削除(編集済: 2025年05月27日 11:11)

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