時間 りん
まわりながら乾いた音で降り注ぐ
しゃらしゃらと光の断片と混ざり合う
一人立ち止まって目を閉じると
胸のあたりに何かが染み込む
緩やかな波長
あなたが居たような記憶
現実をすぅーっと辿ると
居なかったような気もするなんて
重なり合うやわらかい温度は
ずれはじめれば
流れて消える
声帯のふるえのないさけび
どこに居ても
響かない
そうだとして
それがなんだというのだろう
見えないものが
何もかもをくるみこむことが
あったりするんじゃないか
なんて
緊張していた喉もとがゆるむ
少し冷えた空気が肺胞に入っていく
歩き始めると
街のざわめきに引き戻される
三次元が二元化し
二重螺旋のように交わらずに安定化し
それをただ見ている
感情のない現実
わたしは
確実な存在ではない
足裏がアスファルトに反発する一瞬を
見逃してはいるけれど
夕日に赤く染まる
ぼんやりと歩きながら
位置を確認する
優しい時間に
いるみたいだと空を仰いだ