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三浦志郎さま 評ありがとうございます。
不可思議な漫画世界を不可思議なまま終わらせたかったのです。
漫画版「世にも奇妙な物語」といったところでしょうか。
この詩も粕谷栄一さまの詩に影響を受けました。
あのシュールレアリスムな世界観はちょっと真似できません。
詩を書くこと
楽しいです
脳のことを
書けるのは
素晴らしい
卒業した高校生の時
先生はいきなり
詩を書きなさいとおっしゃった
その当時は詩に関心が無く
何も書けなかった
今は詩を書くこと
嬉しいと思えるし
心を表現できるので
とても良いことと
確信を持っている
詩に関して
賞とは縁が無いと
思っていたけど
起承転結で運良く
約2年半前に賞を取り現在に至る
1.長州
幕末 元治元年(1864年)
狂ったように長州は全藩尊皇攘夷に
邁進しようと沸き立っていた
そんななか 藩は
蛤御門(禁門)の変に敗れ
幕府による征討を受ける
そして
四か国艦隊による馬関(下関)砲撃に
前田砲台の占拠と
恥辱にまみれていく
俗論党(守旧派)の巻き返しで
藩政府は一挙に佐幕化
このような
先の見えない混沌とした状況のなか
ある一人の男が
萩・野山獄から解き放たれた
高杉晋作
「動けば雷電の如く 発っすれば風雨の如し」
伊藤博文をしてこう言わしめた
稀代の風雲児だ
2.晋作
司馬遼太郎の小説
「世に棲む日日」にこんなくだりがある
晋作は山形(狂介)の返事を待たずに三田尻
を脱け出し、峠をこえて夜明け前に富海(と
のみ)の浜へ出、おりから帆をあげて出港し
ようとしている便船に飛び乗った。 *1
俗論党渦巻く萩にいると
命はないものと判断した晋作は
山口経由で三田尻に潜伏
富海から飛船(飛脚船)に乗り
九州へ逃げる
その後
四か国との交渉役を果たし
俗論党政権を打ち倒すなど
八面六臂の活躍を見せたのもこの人だ
3.大和屋
ここで小説の行間に埋もれた歴史を
掘り起こす
富海で晋作をかくまい
飛船で馬関まで送ったのが
大和屋政助(やまとやまさすけ)だ
大和屋は屋号で廻船業を営んでいた
本名 清水与兵衛
勤皇の志士の活動を援助した人で
船による長州藩員の輸送などに尽力した
*
富海・西の浜のわが家の墓所
そこから僅かに浜側に寄った所に
自然石の墓石があり
こう揮毫されている
尊攘義民 大和屋政助墓
今は墓参に訪れる者とて少ない
うらぶれた墓所
名もなき民だ
富海にはこういう人が多い
大和屋政助の他に
七卿落ちのとき三田尻で公卿たちの世話をした
入江石泉など
また
富海・石原にある円通寺は
一時 奇兵隊の屯所だった
4.尊皇
維新回天の業は
高杉晋作や桂小五郎ら少数の英傑だけで
成されたのではない
このような
名も無い民草の支持と援助があった故だ
彼ら草莽の臣を支えたのは
尊皇
つまり天皇を敬うこころ
この単純明解な思想が
武士だけでなく百姓・町人に至るまで
老若男女を問わず
防長二州津々浦々に満ち満ちていた
恐るべき感染力だ
やがて倒幕に転嫁される
この情念の渦
大和屋政助の墓石を見るたびに
私は
歴史のダイナミズムは
民衆のなかにこそ生まれると得心する
*1 三田尻 防府市の駅南一帯の古い呼称
富海 防府市の東部地域
息子は就活をしている
俺は終活をしている
駅前の吉野家、オレンジの旗の下
二人は出会い、並んで座った
牛のように黙って
牛丼を掻き込みながら
思い思いに反芻していた
息子は週末を思い
俺は終末を思う
この先、何が起きようとも
俺の胆は据わっていた
牛丼を掻き込める
幸せを噛みしめて
息子には希望を
持つように祈っていた
それを決して口にはしない
反芻している頭の中が
見透かされてしまうから
家畜(牛)を食べていながら
何かに食べられることを恐れながら
長いトンネルの中
社畜(牛)として荷台の上で揺らされて
どこかに運ばれる人生
トンネルを抜けた先に
光が見えたと思いきや
そこはまだトンネルだった
息子の行く末を案じていた
黙ったまま
流されるまま
そもそもどうして
二人を牛に例える
遠い先祖は狩猟をしていた
群れを嫌って狼となり
一人が辛くて犬になり
犬が太って豚にでも牛にでも
頭の中なら何にでもなれる
反芻するのをやめてみた
自分の力で咀嚼してみる
欲望に任せて手にしたものを
削ぎ落として身軽になって
荷台を降りると決めたんだ
息子よ、結果ばかりを求めていないか
始めがあれば終わりがあると決まっているんだ
これから先の体験をどう捉えるかは
俺たちで決めることができるんだ
どうか家畜にならずに
自由の旗の下
人間のままでいて下さい
十一月。街を覆うのは灰色の空。
冷えた風がビルの隙間をすり抜け、行き交う人々のコートを揺らす。
ネオンの光は昼間の明るさにぼやけ、
この街の全てが白い霞の中にある。
駅前の道では枯葉が舞い、足早に通り過ぎる人の靴に踏まれながら砕けていく。
信号待ちの群れの中、噂する声が耳を刺す。
「あの服、趣味悪すぎない?」「空気読めないよね」「友達いないのも納得」「かわいそう」「いやいや、もう存在が無理」「さっさといなくなればいいのに」
自尊を賭けた闘争、権力の風が吹いている。
その黒風の犠牲者を想い、
涙が頬を伝い落ちるように、
街路樹からは、枯れ葉が落ちる。
「もうすぐ冬だよ」
彼が告げる季節の訪れ。
枯れた母親が眠りに就く、その足元で彼は微睡む。
街路の行進者は彼を踏みつけ、彼は痛みに目を覚ます。
千切れ行く体を忘れるように、明るい声で彼は言う。
「もっと高いところへ行こう!」
また、アスファルトと靴の間で傷が増える。
「さあ、急がないと!」
冷たい風が一つ吹き抜けて、彼は地面すれすれを錐もみして不格好に舞った。
「あはははっ」と笑い声を響かせながら、彼はこちらへと手を伸ばす。
その手を握りたいのに、悴んだ僕の指先は、不自由な僕を笑っている!
言葉一つ言えぬまま、まだ信号が変わる前、一歩踏み出した僕の目の前、
車に轢かれて彼は散り、その笑い声は消え去った。
やがて信号は青になり、群衆に押され、僕も歩き出す。
音の無い風が頬を刺す。僕は初めて気が付いた。ここはもう既に冬だった。
ジャンル問わず打楽器奏者は
誰よりもこの器械と近しい
初心者からトップ・プロまで
ステイック・ストロークとコントロール
このエクササイズは欠かせない
この器械と相対して
たとえばこんな風に思ってみる
(全ての音楽は四分音符に帰結する
(多くの人生を四分音符になぞらえる
心臓の鼓動あるいは脈拍
呼吸のリズム
歩行のリズム (ANDANTE~歩くような速さで)
時を刻むセコンド(秒)の動き
1分4分音符1拍 1時間60拍
1時間4分音符1拍 1日24拍
1日4分音符1拍 1年365拍
この音符が現世界を
人と寄り添い流れてゆく
その拍数を人々は生きてゆく
この器械と相対して
どのくらい経つかを思ってみる
五十年以上!(もちろん断続的にだがー
(やれやれ あきれたよ 長い付き合いさ
自分は今まで何拍ストロークしたか?
音符を全て繋げて
(さて 地球を何周したろうか?
多くの人は
砂時計以上に使うことがない
こんな道具にも趣味はあって
現代的なデジタルを私は好まない
メトロノームとは
あくまで昔ながらの
ミニチュア・ピラミッドの三角形
音世界に屹立する塔でなければならない
生音でなければならない
時計の振り子とは逆向き
天を目指して針を振る
音楽時計
タイムキーパー
ベーシックを支配する独裁者
信じて盲従する
ついてゆく (いや ついてゆく では遅いのだ
ジャストで打って器械音を消さねばならない
様々な音符拡散
しかし底辺の守りは常に“四分”(しぶ)
この器械と相対して
信頼しつつも思ってみる
(これは始まりであって終わりではない
(これだけではついに音楽たり得ない
向き合う時は従順
離れては自立自由
メトロノームの無機質を忘れる
そうでなければ
生きた音楽が成立しない
BEATに緩急の表情
TIMEに人間的感覚
(いわゆる“タメて”と“つっこんで”
音楽に心を入れよう
血を通わせたい
人が演奏するとはそういうことだろう
様々な音符と音楽ジャンル
しかし底辺の守りは常に“四分”
(全ての音楽は四分音符に帰結する
この考えをメトロノームから教わった
今日も向き合う
常に従順に―
感謝はしている
器械が課すベーシックに だ
しかし現場では私が決める四分音符
服従と離反
その狭間に音楽は在り
ラプソディ……「狂詩曲」。本来、詩に由来する。
自由奔放な形式で叙事的内容を表現した楽曲。
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〇 付記
楽器メーカー以外に
時計メーカーもこの器械を造っているのは頷ける気がする。
私が使っているのは国内トップの時計製造会社のものだ。
夜 私は寝室の明かりを消して眠る
締め切ったカーテンの向こう側には今日も
ポッと優しく橙色の光が点いた
それは家の前に立つ街灯の光
窓から覗くと立姿が見える
私の生まれる前からこの街灯は家の前に在って
日が暮れると家の前の道路を照らしている
この光は私が眠りに落ちるためのお守りだ
私は恥ずかしながら暗闇が怖い
幼い頃に兄達に押入れに閉じ込められた苦い記憶が
二十歳を過ぎた今でも頭の奥に残っている
周りの全てが黒色に包まれる感覚
目の前にあるはずの小さな掌
涙で濡れた洋服を纏った小さな身体
ガクガク震える細い脚
何もかもが消え去って幼い私は居なくなった
あの日の私の泣いた声 (出して!出してよ……)
兄達の高らかな笑い声 (アッハッハッハッ……)
記憶に刻まれた悪夢
━━外の光に気が付いたのは偶然の出来事だった
家族の誰かが電気を使い過ぎたせいで我が家だけが停電をしたあの日
私が眠るためベッドに横になった時
突然 家の電気が消えた 全ての部屋の電源が落ちる
当然 自室も暗くなるはずだった 湧き上がる恐怖心
ところがカーテン越しに橙色の光が浮かび上がったのだ 思わず私はカーテンを開く 外の街灯の光だった
優しい光が暗闇を部屋の隅に追いやった
押入れに閉じ込められたあの時と違って輪郭がある
色白の両手 痩せぎすな身体 強ばる脚
私はぼんやりと橙色に染まった
私は隣の部屋に悟られないように静かに嗚咽する
頬を伝って漏れ出た悲しみは少しだけ温かだった
まさか街灯の光に救われるとは
充血した目と涙の跡が残った顔で微笑みながら窓の外へ呟いた ありがとう
その日から夜眠る時は部屋の電気を消すことにした
今日もカーテン越しに橙色の光が点く
まだ暗闇の恐怖を克服したわけではないけれど
私のことを守ってくれるものがある
それに気が付いた事で私の心は強くなれた
眠りに落ちる時 眼は閉じているから暗闇 けれど眼の奥に感じる外の街灯の優しい光
この瞬間(とき)も守られている 橙灯よ ありがとう
補足です。
この詩に出てくる橙色の街灯は一般的な水銀灯やLED灯ではなくナトリウム灯をイメージしたものです。
ナトリウム灯は水銀灯よりも低コストで雪や霧の中でも視認性が高いので、北海道など雪国やトンネル等でよく使用されているそうです。