朔月の光 白猫の夜
星を見たくなって
夜を見たくなって
窓を割って
格子を歪めて
飛び出したんです
はしって
はしってはしって
はしって
血みどろになりながら
アスファルトの上を
砂利道を
けものみちを
走って
走って走って走って
走って
息を切らしてたどり着いたそこは
足の裏をくすぐる柔らかな草原で
たどり着いて見上げたよぞらは
一面の鉱石が
流れる鉄屑が
やさしく煌めく光の束が
明かりひとつない真っ暗な世界を照らして
駆けて
駆けて
駆けて
のびる朔月の手
大地をふわりとひと撫でして
私の黒い涙をそっとさらって
すべてを、ゆるして
頽れる私は弱い人間だから
何者にもなれないただのヒトだから……
傷だらけの足についた枷を手慰みに
つまらない日々を送る中に
今でも時折星が見たくなって
格子のついた窓の奥からまた
夜が欲しくなる