移ろう季節の輝き 松宮 定家
あてもなく 雑踏へと繰り出す
押し寄せる人たちの波は激しいのに
心の海は虚ろな凪
カラフルな看板が立ち並んでいるのに
瞳の裏はモノクローム
通りを抜けて 公園まで歩く
季節の変わり目の今時分は
訪れる人もまばらだ
冷たい風に吹かれながら
偉人像や美術館を通り過ぎる
ふと、薄雲の間から日がさす
下した視線の先に 広がっていたのは
円熟味漂う黄みを纏った 緑
最後の晴れ舞台を熱望する 黄金
猛々しくも終局へと向かう 紅
遠い異国の国旗にも似た
イチョウ並木のグラデーションは
穏やかで、温かく、美しく、
G線上のアリアを奏で、
今この瞬間を彩った。