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スレッドNo.1052

陽気なあいさつ  もず

ようこそ、親愛なるぼくの兄弟たち!
白昼の目眩が指し示す、霧の彼方の暗鬱な岬。空のない浜辺で啼く、一羽の鴫。日射しを浴び、きらきら陽気に笑うまぶしい木の葉の、その裏側にある、さびしげなもうひとつの顔。抜け落ちた、漆黒の鳥の羽。腐った溝に産み落とされた虫の卵。生まれ落ちる矢先に翼を病んでしまった詩人たち。
ぼくはきみたちを待っていたんだ。おお、始まる前に終わってしまった、色気にあふれた不幸なぼくの同胞よ!
もはや何ひとつあたためることのできない太陽と、
償うことの叶わないきみたちの暗い影こそ、本物のチケット。
やあ飲んでくれ。歌ってくれ。これからは陽気にやろうよ!
ぼくは挨拶するよ、はじめて出会った日のように礼儀正しく。
茨の藪の中に咲いた菫のように、永遠に注目されることのない美しいきみたちの、持って行き場のない溜息のために。
朝靄の港に、船はもう来ている。
わくわくするのはこれからだ! 見知らぬ裏通りの果物市場が、異国情緒が、秘めやかで危険な出会いの数々が、どれほどきみたちの訪れを、首を長くして待ちわびていることか。
さあ出かけよう。
手ぶらのまま、着の身着のまま、
胸の高鳴る冒険旅行へ。冷たいコンクリート、埃のたまった底辺から出発する、ぼくらの新しい地獄めぐりへ!

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