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スレッドNo.1053

部品  ピンボケに気づいた大人

電気信号が届かなくなって
どこに向かえば良いかわからなくなった

機械仕掛けで動く体は
キシキシと鈍い音を立てるから
歩むたびに自分が傷ついて行くのがわかった
でも、どこかに向かわずにはいられなかった

ある日、似たようなやつと出会った

そいつは少し一緒に歩いた後で
「僕の中のこのパーツとこのパーツを取り付ければ、
 君はもう少し楽に歩ける様になるよ」
そう言って僕に自分の部品を取り付け、
どこかに去って行く

「君は良いのかい?」と僕が尋ねると
「僕は誰かに貰うから大丈夫」と答えた

またある日、似たようなやつと出会った

そいつも不器用そうに歩くから、
あの日の彼を真似をするように、
今度は僕がそいつに自分の部品を取り付けた

ところが、そいつは少し迷惑だと言わんばかりに
何も言わずにその場から去って行った

僕は少し腹を立てたが
そんなこともあるかと飲み込んだ

それからいろんなやつと出会った

部品をただくれたやつ
部品をあげたやつ
部品を交換したやつ
部品を盗むように貰って逃げて行ったやつ

そうこうしているうちに
キシキシと音を立てていた僕の体は
それなりにスムーズに動くようになった

ある日、別のやつと出会った

そいつと暫く歩いた後で、僕は
「そういえば何かパーツはいるかい?」
と尋ねた

彼女は
「何も要らないよ、でも、」
「ただ側に居てほしい」
と答えた

最初は意味が分からなかったが、
少し経って僕は
「うん」
と納得するように頷き、
また一緒に歩き出した

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