規格に填まれなかった私たちへ 紫陽花
私はただぼーっとしていた
暑すぎた夏が終わったとようやく
私の体が認識したからなのか
いつものようにみちこちゃんから
お金を預かってコンビニに
通販の青汁の支払いに行った
セブンイレブンの自動釣銭機に
じゃらじゃらっと封筒から
お金を入れる
ウイーンといつもの音がしている
と思ったらなんだかガチャガチャ
音がするエラー音も聞こえるような
私が放心してると
店員さんが異変に気付いて
自動釣銭機を開けてくれた
中から出てきたのは
500円玉より一回りは大きい
昭和の青函トンネル開通記念硬貨
その大きさは釣銭機の穴を通らないよね
当たり前だ
確認を怠った自分を責めながら
店員さんに平謝りした
店員さんは
この硬貨は使えません
普通の500円を出してください
と言っている
そう 普通の500円を出さないと
いけない
普通でないと時々こんなふうに
はじかれてしまう
帰り道やっぱり私はくよくよしていた
元を辿れば私は酒乱の父のいる家庭で育ち
暴力をうけた青あざを隠し通学し
ある日ふと異常に気付いて
市のDV相談センターに相談したところ
10人のうちの2人はそんな家庭です
とさらっと言われたところから
家出 何回もの転職
高齢出産と こんな生き様
家族があるだけいいじゃない
職につけるだけいいじゃない
子供がいるだけでいいじゃない
そうだその通りではある
有難いと思っている
ただ世間でいう8割の規格には
填まれなかった
みちこちゃんも似たようなもの
彼女は父母の早世 自身の精神障害
今でも3日に一回は怒ってる
あの鍵付きの病院に入院させられた事
ああ私たち世間一般という規格には
填まれなかったみたいね
青函トンネル開通記念硬貨と一緒だ
記念硬貨だってお金なのにね
あの自動釣銭機の穴の大きさに
合わなかっただけなのにね
今日は
皆が決めた普通の穴を
するりと
通り抜けられなかった
私達だって存在してる
なんだか分からないが世間の8割の
行動規格に合わなかっただけだ
そしてなんだかんだ言いながら
みちこちゃんと私
今はにこにこ穏やかに暮らしている
今日から青函トンネル開通記念硬貨も
私達と穏やかに暮らせばいい
そういうことにした