見えないもの エイジ
僕の住むこの高層マンションには
市井の人々の生活が
ぎゅうぎゅうに詰められている
それにしてはあまりに静かだ
このマンションでは
市井の人々の想いが
膨らんでいるはず
その想いは気配をもって
夜の静寂に溶け込んでいる
夜 ベランダのカーテンを開けると
いたずら小僧が駐車場で
遊びまわってはいないかと
僕は眼光を光らせる
「いや、誰もいない」
ベランダに出て
風のかたちを見るために
わざとタバコの煙を吹かした
ようやく姿なきものが
そのかたちを表した
誰も干渉し合わない
このマンションでは
様々な想いが今も
音なき音をたてて
渦巻いているはず