川面 秋冬
川面を走る女を見たのは
一昨日の朝のことだ
たぶん
誰も
信じてくれまいと
今朝は
いつでも
撮れるように
構えている
年齢は
分からず
思い返せば
髪が長かっただけで
男だったかもしれない
待ち構えると
現れない
か
ぼくは
川に近づき
スマホを
尻ポケットに入れ
大きく深呼吸する
一回、二回、三回と
心が決まり
向こう岸を
目指して
川面を
走り出す
一歩目から
浮かばず
ランニングシューズは
ずぶ濡れになる
川幅
十メートルほどの
浅瀬
髪の長い人が
追い越していく
年齢も
性別も
分からないが
川面を
走り抜けていく
向こう岸に
着いたら
消えた
あれくらい
髪が伸びるまで
続けたら
ぼくも
川面を
走れるように
なるだろうか