豹紋よ 暗沢
ヤマザクラの葉へ赤がともる頃だった
何処よりかひらりひらりと迷い込んできた おまえら
豹紋よ 染色を経て枝より離れ
舞い落ちたとりどりの葉がさながら化身した おまえら
あの一見毒々しい芋虫ども
やわな朝陽を受けての忠実忠実しき(まめまめしき)行進が
人びとの目を瞠らせた小さな斑点のうねりであった おまえら
紅葉は盛りを過ぎて路傍に隅にて重なる
それらの枯葉はおまえらの
成れの果てであるか 豹紋よ
華々しき秋の身罷りのもと
運んだ末の彩りに紛れて おまえらは
豹紋よ 消え行くままなおまえら
その輝かしき羽の一枚を
私は書物へと栞として挟もう
そのとりどりに鮮やかな羽で
一枚のきらびやかな頁を織ろう
それらを綴じた書物を密かに
汗牛充棟の一隅へでも忍ばせよう しかし
これらも不純な想念(イメージ)に過ぎないのだ
豹紋よ
冬を越せぬおまえらの 悉皆失せた
季節はもう間近だ 豹紋よ