石蕗の季 荻座利守
真冬の太陽のような
石蕗の
小さな黄色い花の足下
秘められた
愁いを顕すかのような
暗い緑の葉の面は
虫も訪れぬ
この季に咲く花の
孤独を映して
その深い光沢は
たとえ日陰に在っても
堪え忍ぶことの尊さを
己の姿を以て
伝えようとしている
身を切るような冷たい風も
心を凍らすような寂しさも
石蕗の花のような
奥ゆかしさや
石蕗の葉のような
深い輝きを
もたらすものならば
それらは皆
己に与えられた
尊い恵みと思い
いまこの季を
もの言わぬ石蕗の顕すが如く
心ゆかしく生きてゆきたい