ベルが鳴る 紫陽花
ちりんちりん ベルが鳴る
私は慌てて隣室に向かう
昼ご飯は何なの?
義母は質問する
ハンバーグですよ
義母はため息交じりに
はあ どうせ出来合いのもんでしょ
私は思う
牛からころしてきましょうか?
義母は寝たきり5年目だ
初めは入院していたが
嫌になったらしく
3年目の同居だ
ちりんちりん
どうしてすぐ来れないの
あなたは動けんるんだから
ちりんちりん
おむつが湿って気持ち悪い
ちりんちりん
昨日の味噌汁は味が薄かったよ
ちりんちりん
ヘルパーなんて他所の人間を入れないで
私の世話をするのは長男の嫁の仕事
ベルが鳴る 命令が飛ぶ
年寄りの言うことは聞かないといけない
嫁は姑の言うことを聞かないといけない
ベルが鳴る度 私は今賽の河原で
もう渡るしかないんかって
顔をしているだろう
でも私は知っている
お義母さんの方が先に
賽の河原の前で途方に暮れる
顔をするってことを
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これは完全な回顧録です。私の生活で
この出来事が一区切りついたので
忘れようと思うのですが、この
なんとも複雑な喪失感を残しておきたく
書いています。
ですので、評は無しでお願いします。