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スレッドNo.1126

放射冷却の朝  荻座利守

凍える冬の朝

張りつめる大気を
通り抜けて
高空へと放散しゆく
赤外線の
震えるような幽かな声が
呼びおこすものを
あなたは再び
感じとれるだろうか

砂糖菓子のように
微細にきらめきながら
この地のあらゆるものに
くまなくまぶされた
ざらつく霜の
刺されるような感触を

静止する水面を
覆い尽くした薄氷の
滑らかに透き通りながらも
僅かに歪んだその面を
柔かに透過する
淡い冬の陽光の屈折を

繭糸ほどに繊細な
銀色の筋を描く
飴細工の如き霜柱が
脚下で折れ崩れるときに
靴底より伝えくる
乾いた戦慄きを

枯れた葦の周りを
静かに漂う川霧が
東雲をつらぬく
幼い朝陽をとらえて
黄金のローブを纏うかの如く
輝く様を

高空へと放たれた
赤外線の幽かな震えとは
あなたの奥底に
しまい込まれていた
記憶との共振

あなたの肌を切りつける
剃刀の如く鋭い
高空の蒼に散りつつも
その下に立つあなたの
存在の熱量を際立たせて
かじかむ疼きの内に潜む
冷徹ながらも
甘美な麗しさを呼びさます

放射冷却の朝

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