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スレッドNo.1133

2022年11月15日から11月17日のご投稿分の感想と評です。  夏生

2022年11月15日から11月17日のご投稿分の感想と評です。
大変お待たせいたしました。遅くなりまして、申し訳ございません。

理蝶さん「失火」

理蝶さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「失火」の評を送らせていただきます。

若い頃の恋の記憶が、良いものではなく苦いものとして残っている。
閉ざしてしまった、逃げてしまったことの後悔が静かに燃えていく。
当時の自分や相手の心に向き合わなかった悔いが、今、静かに燻ぶった状態で
主人公の心にあって。どうせなら、思いきり傷ついてしまえばよかった、という思いが
「お前は正しく傷つくべきだったのだ」という言葉の中に込められているように感じました。
記憶と空想のさかのぼりから見える景色を主人公は涙を浮かべながら、眺めます。
その心の揺れが、動きが読み手に伝わってきて、切なさがこみあがるのを感じました。
声に出して読みますと、風景の連続が加速されて迫力が増しました。
黙読と朗読で違った印象になる、魅力的な一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。

紫陽花さん 「夕焼けリサイクルがあれば」

紫陽花さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「夕焼けにリサイクルがあれば」の評を書かせていただきます。

不穏な初連がどんな流れに変わるのか気になって、惹きつけられました。
忌まわしい思い出が怨念となって一枚の紙になる。形となるところに思いの強さを感じました。存在と記録、証を残すために紙になったと解釈しながら読み進めました。
夕焼けが怨念をリサイクルする、という発想、いいですね。どんな風にリサイクルされるのかと思ったら、紙飛行機にして飛ばして、夕焼けに燃やす。透明で綺麗な情念に生まれ変わる。主人公の失恋の怨念は、彼の家の風鈴を鳴らして青空に消えた、という流れ、
お見事でした。思わずため息がもれました。めでたし、めでたし、の冷めた響きもどこかユーモラスで印象的でした。
淀んだ空気が一気に浄化され、晴れやかになってさわやかな風が吹いた、清々しい読後感を楽しめる一篇でした。
御作秀作とさせていただきます。



妻咲邦香さん 「私」


妻咲邦香さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「私」の評を送らせていただきます。

バスルームという設定から、言葉が心地よく響いて聴こえて。
初連の風景描写から惹きこまれます。

探してたものとは限らない
でも追いかける
美しいものとは限らない
でも見たいから

ここ、いいですね。衝動に理屈はなくて、無理に止めることもしない
ありのままの自分を感情だけで見ないで、受け入れています。

三連目の言葉の弾み。楽しいようなかなしいような、言葉の流れを
朗読しますと、その弾みがさらに盛り上がります。
最終連で流れが戻り。心地よいバスルームでのひととき。一日が終わる
瞬間の音が聴こえたような気がしました。
黙読でも言葉の響き、流れが聴こえてくる魅力的な一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。



さくたともみさん 「冬の知らせ」

さくたともみさん、はじめまして!
ご投稿くださりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきすので、ご了承ください。
僭越ながら御作「冬の知らせ」の感想を送らせていただきます。

北国の冬支度。人間以外の生き物は寒さを凌ぐために、いち早くあたたかい場所を準備するか、生涯を終えて次の生命を繋ぐ。人は積雪の被害を抑えるために準備をする。
その様子を見下ろすナナカマドの実が勢いよく冬を知らせます。厳しい季節の到来を警鐘のように告げながら、力強く存在を示しています。
ナナカマドは丈夫な植物だそうで、縁起物にも重宝されているそうですね。
一粒に真っ赤な元気がつまっているのでしょう。
季節の移り変わりの中で、生き物の営みの変化、植物の変化を鮮やかに活写したような一篇
でした。



樺里ゆうさん 「ちがい」


樺里ゆうさん、はじめまして!
ご投稿くださりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきますので、ご了承ください。
僭越ながら御作「ちがい」の感想を送らせていただきます。

希死念慮の経験がない親を、羨ましくも恨めしくも思いながら
どこか憐れむような眼差しがあって。自分の中であらゆる解釈をして
納得しようとする。こどもが親を超えた瞬間を見たような気がしました。
どうしてわからないの、と、責めたり嘆くのではなく

親子だってこんなにも
違うんだから

わかりあえんくたって 
別にいいや

と、割り切る。わかりあえなくて当たり前と思えれば、絶望しなくて済む。
親子でもちがう人間なんだ、と、わかるまで長い時間がかかった跡が
垣間見えるところも、この詩の魅力だと感じました。
人間関係の難しさに囚われたとき、ふっと救ってくれる一篇でした。




猫目屋倫理さん 「私的な営み」

猫屋倫理さん、はじめまして!
ご投稿くださりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきますので、ご了承ください。
僭越ながら御作「私的な営み」の感想を送らせていただきます。

はじめは、幻想的な夜空に惹かれながら、その美しさを詩に昇華した作品だと思いました。
繰り返し読んでみますと、それだけではないと感じたのは三連目で。

透き通った温度の色に
息を震わせたことがあるか
吸い込んだ深夜の緑に
揺蕩う薄紅の水音に
身体の奥が
心臓が
震えるか
魂が

この問いかけから、夜空の、宇宙の無限の美しさの欠片を感受出来ているか。気づかないまま過ごしていないか、自問自答しました。美しいと感じたその先を表現できなければ、と。
夜空の美しさを描きながら、感性の鋭さを、それに合った言葉を探しあてる力を
ひとつひとつ確かめているように感じられた一篇でした。



松宮定家さん  「移ろう季節の輝き」

松宮定家さん、初めまして!
ご投稿下さりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきますので、ご了承ください。
僭越ながら御作「移ろう季節の輝き」の感想を送らせていただきます。

心と対照的な風景を見ながら、移ろう季節を感じる。主人公に何があったかは
わからないのに、共感をおぼえて主人公の目線を追う。見上げますと、
円熟味漂う黄みを纏った 緑 
最後の晴れ舞台を熱望する 黄金
猛々しくも終局へと向かう 紅

遠い異国の国旗にも似た
イチョウ並木のグラデーション

が、見えて、その輝きの眩しさも感じました。

ひとつの風景そのものの変化や美しさなど
言葉を尽くして表現された御作は、映像よりも鮮明な
色彩を放っていました。
最終連で、イチョウ並木の風景を穏やかで、温かく、美しいと感じられた主人公の心が救われたようで、晴れやかな気持ちになれた一篇でした。



もずさん  「陽気なあいさつ」

もずさん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきますので、ご了承ください。
僭越ながら御作「陽気なあいさつ」の感想を送らせていただきます。

朗読しますと、勢いが増して、声が大きくなりました。
世に出ることが叶わなかった詩人たちへの励ましのようなレクイエムといった
印象がありました。
自虐的のようで、暗い影を持った詩人を受け入れる懐の深さがあって。
この先はきっと希望に満ちた、報われる道が…というような陽気さではなく

冷たいコンクリート、埃のたまった底辺から出発する、ぼくらの新しい地獄めぐりへ!

と、さらなる厳しい状況を指し示しながら、その表情は笑顔といったある種の不気味さが
面白かったです。潔さを感じました。誰の目にも触れなかった不幸を掬い取って、昇華していく。その眼差しの鋭さと掬った手のあたたかさの対比も見えたような気がしました。
歌うように叫ぶように読みたくなる一篇でした。




ピンボケに気づいた大人 さん 「部品」

ピンボケに気づいた大人さん、初めまして!
ご投稿下さりありがとうございます!
初めての方は感想のみとさせていただきますので、ご了承ください。
僭越ながら御作「部品」の感想を送らせていただきます。

傷ついた「機械仕掛けで動く身体」は知り合った「似たようなやつ」と出会って「部品」を
取り付けてもらったところから話は始まります。
機械仕掛けで動く身体は何を意味するのか。部品とは何かなど考えながら読める面白さ。
人体も脳が発する電気信号で動いているという話を思い出し、「機械仕掛けで動く身体」は
こわれやすい生身の人間そのもののような気がして。「部品」は心のことで、少しでも分けてもたえれば、分けることが出来たら、自分の心を動かすことが出来る。
その繰り返しの中で、「ただ側にいてほしい」といってくれる人が現れて、この作品全体に光が差し込んだような、あたたかい気持ちになりました。
詩としても物語としても楽しめる一篇でした。

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