探し物 朝霧綾め
鍵がない
鍵がない
机の引き出しの鍵がない
なくすのも当たり前だ
これまでの私のずさんな管理といったら
鍵をかけたら ぽいと
方向も見ずに
どこかへ放り投げていたじゃないか
棚のうしろを覗き込み
椅子を動かし
ついでに掃除機をかけるが
見つからない
自分で鍵をかけ
自分でなくし
自分で探す
ほとほと馬鹿だと思いながら
床にはいつくばって
机の下の暗闇に目を凝らす
こんなことになるなら
鍵なんてかけなければよかった
家の鍵でもないんだし
別に引き出しの中に
機密書類なんて入っていなかったし
スマホでおまじないを調べ
唱えながら
もう何度目かの本棚の上を見る
六畳の部屋を探しまわること二時間
ものを探していると
部屋はきれいになるものらしい
整理整頓 掃除機までかけられている
反対に散らかった心
見つからない見つからない
何で見つからないんだろう
落ち着かせようと深呼吸する
ここまで見つからないとなると
自分で隠したのか?
大事な物が入っているから
鍵は隠しておこう
そう言ってにっこり微笑む
数日前の私の姿が目に浮かぶ
せめて隠し場所は覚えていてほしかった
がたがたと
開かない引き出しを引っ張る
これを毎日続けたら
いつかは開いてくれたりしないかなあ