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スレッドNo.1167

冬を見ている  理蝶

北風は朝の清潔な
川面を撫で
流れるもの同士の親密さで
互いに挨拶をし
冷え込みを強くする

装甲車のように
着込んだ人々が
体の芯に熱を溜めている
缶コーヒーを拝むように持ちながら
彼らは彼らの場所へ
しまわれてゆく

朝の鳥はどれも
濃い茶色をしている
逆光に透かされた
無駄のないそのフォルムに
やはり彼らは空を飛ぶため
生まれたと感じる

寂れた路地に
横たわる
冷え切ったスチール缶
やがて登る太陽は
その路地を照らすことはなく
表通りから滲んできた
冬晴れの陽気が
微かに漂うのみだ

肩を寄せ、肩をすくめ
人々は語らう
体に溜めた熱は静かに交わり
空に吸われ消えてゆく
代わりに震えと北風が体を埋める

色彩を失いつつある自然に
抗うかの如く
煌めき出す都市
気が早いことに
朝にはもう
陽気な音楽と
発光する電球を
夜に向けて街に
ばら撒き始める

北風が強くなる
面という面をなぶっている
あんなに親密だった川面にも
等しくぶつかっている
川面は怯え泡立っている

北風がさらに強くなる
乱暴に上から吹きつけて
思うが存分凍てつかせてしまえ
そして春が来る頃には
何の未練もなく
消えてしまえ

巨大な冬が
遠い北からやってくるのを
灰の空から降ってくるのを
僕は見ている

僕は澄んだ冬の瞳で
真摯に向かい
心を慰めるものが
景色を掠めるまで待つ
ポケットに手を入れて
いつまでも

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