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スレッドNo.1168

十二月、巡る  江里川 丘砥

十二月の朝
白い顔と対面した時
あなたはもう話すことができなかった

ともに生きた二十年
もうすぐ二十歳になる私を見る前に
あなたはあの世へ還っていった

火葬した煙は
冬の青空へ真っ直ぐあがる
体は白い骨となり
石の下で先祖と眠る

十二月に思う
百年生きた体を手放し
永久の眠りについたあなたのことを

この世での長く長い一生も
あの世では光り輝く一瞬の閃光なのでしょうか
魂はありましたか
それならばあの後
どこへ行ったのでしょうか

霞がかった朝の山を見れば
そこに浮いているようで

あなたの好きだったものを見れば
思い出を話せば
そばにいるようで

妙に懐いてくる子を見れば
まるで生まれ変わりのようで

十二月が来るたびに
さようならを言えずとも穏やかに亡くなった
あなたを思う
いつでも
この世の中で私を私以上に
愛していた人が在ったと知る

十二月、思い出す
誰もいつかは永久の眠りに

夢に出てきたあなたは
私に話しかけるでもなく
ただ笑いかけてくるだけでした

十二月、巡る
同じ季節が来るたび
あなたを知らない人がまた増え
時が流れ
それも一瞬に過ぎ
私がとうとう永久の眠りにつく頃
あなたはこの世に再び生まれる

時代の境界線を跨いで

そうしてまた
私はあなたの近くに生まれてみようか、と
繰り返すのです

十二月は巡る

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