おっさん 晶子
四月一日
夜のSL広場で
酔っ払いのおっさんが
一人でずっと騒いでた
誰かあいつを知らないか
名前なんかは知らないよ
呑み友達ってそうだろう
なんつうの
女性経験っつうの
あんまりなさそうだったから
ここは俺が兄貴となっていろいろ教えてやろうとさ
思っていたわけよ
弟みたいなもんだから
おっさんとでもしとくか
まあ俺もおっさんだけど
あいつはちょっと変だけど
いい奴なんだよ本当に
まあ俺もいい奴だから
いろいろ話してやったわけ
そんで俺元漁師っつったら喜んじまって
人をとる漁師になろうなんていいだしやがった
本当に変な奴
でもね
時々淋しそうな顔すんだわ
俺も淋しいからね
なんとなくわかるんだわ
俯いて
たぶんあん時は泣いてたな
えりとかさばとかいいながら
そしたら神の子になるとか言って急にいなくなっちゃうんだもん
心配するべ
大丈夫かよって思うべ
やめた方がいいよ
神様になるなんて
石投げられるぞ
大嘘つきって
でもあいつはいいんだって
大嘘つきでいいんだって
人がつかなきゃ誰が大嘘つくんだって
馬鹿が
もし見かけたら言ってやって
神様になんかにならなくていいから
俺はお前の呑み友達だから
待っててやるから
また来いよって
言うだけ言っておっさんは
SLの中に消えてった
消えてった