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スレッドNo.118

あたまのわるい私は  荻座利守

あたまのわるい私は
いつも霞がかかったように
うつくしいものが
よく見えない

あたまのわるい私は
散らかった部屋のように
うつくしい言葉を
見つけられない

あたまのわるい私は
寒さにかじかんだ手のように
うつくしく
言葉をつづれない

例えば
老婆の手のような
プラタナスの葉や

陽光の欠片のような
たんぽぽの花や

龍の鱗のような
硬い柊の葉や

愚直なロボットのような
働き蟻の姿を
眼に留めて

風に飛び散り
消えてなくなるような
けし粒をかき集めるが如く

空を這いまわる雲や
風雨を呑み込んだ奇岩に
見る人が形を与えるが如く

とらえどころのない靄に
形をもたらそうとして

現れたものは
できのわるい紙風船
隙間だらけで
歪んだまま地に落ちる

それでも私は
なおも
紙風船を膨らまそうとする
あたかも命の息吹を
吹き込むかのように

そう
あたまのわるい私にも
ひとつだけ言えること

言葉に命を
与えてみたい

命を吹き込まれた
言葉そのものこそが
この世界に隠された
見えない次元の影法師
ほんの時折にしか現れない
真実への扉だから

隙間だらけの紙風船に
あたまのわるい私は
なおも
息を吹き込む

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