こころねの墓場 白猫の夜
月を見上げて死を想う
猫を抱き上げて死を願う
ほのかに香る心音に
土をかぶせては見ないふり
ふたばは出ずとも根は張りますので
いつしか重たくなりました
根腐ればかりが増えゆく一方
誰も気づきやしないのです
容易い笑顔のその下は
誰にも気づけやしないのです
海の水は冷たくて
どこまでも沈んで行けそうで
腕に突き刺さる長いツメ
身を捩り逃げようとする私の猫を
先に沈めてあげました
わたくしはいまだ生き下手で
無垢なオトばかり消していく
いつしか心は枯れました
いつかと夢見た蓮池で
いつしかおとはきえました
いつかとのぞむまでもなく
鳴き響く愛しい猫の声
私でさえも気づけなかった
ひとりぽっちの心音を
気づいてくれた猫の声
つんざくような ねこのこえ
月を見上げて死を願う
猫を抱き抱え死を望む
頬を伝うものは知らん振り
震えるうでには愛のあと
さあこれでもう引き返せない
腕の中の小さな命
消え果ててしまった愛しい命
星の川渡る口実に
私は猫を殺めました