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スレッドNo.1221

鎌倉という病  三浦志郎  12/18

最近の研究では初の武家政権は「平清盛による平氏政権」
とするのが学界通説のようである。源頼朝の鎌倉幕府は今
後、“初の本格的な”という枕詞が付く武家政権となるだろう。

*          *          *

武家の歴史七百年の中で“本格的始まり”は
鋼(はがね)のような 
大鉈(おおなた)を振るうような政権で

それは常にあった
平家にはなかった謀略と殺戮という病
あるいは気狂い 物狂い という病
ゆえに東夷(あずまえびす)と蔑まれた

気狂いのように働くうちに―
坂東武士たちに権力が転がり込む
彼等は欣喜しつつも自らに驚愕したに違いない
その光栄をどう遇していいか 戸惑ったのだろう
エネルギーが行き場を失い 迷路に陥って
共通の敵―平家―を倒し 持て余したその力を
今度は一族係累・同僚同志に向けてしまう
そもそも(我が 我こそが!)の気風の地である


平清盛死して平家は瓦解滅亡した
源頼朝死して政(まつりごと)は混乱した
権力の重石(おもし)が失われた時
歴史の公理が悪霊と化し
彼らに憑りついたのかもしれない


時代の推移は人々に
規範 徳目 文化 教養 をもたらすが
鎌倉武士 いまだその恩恵に浴してはいない
武家政権七百年の中で鎌倉はまだ始まったばかり

蛮性という持って生まれた病の人々
バーバリアン そして 蛮族
それゆえの醜怪 粗野 未熟 不器用を
滅んだ者はもちろん 栄えた者をさえ
憐れみ偲びたい
荒ぶる裏側で潔さを知っていたことは
手を打って賞讃したい

鎌倉武士 そんな病の癒えぬまま
次代を他者に託して去って行った

時代の成熟を見ることもなく―

*          *          *

今日も鎌倉は大勢の観光客で賑わっていることだろう。
そんな喧噪をよそに、今年一年ずっと、いにしえの鎌倉
のことを考えて来た。これを契機に、これからも考えて
いくだろう。その時、「時代の未熟、蛮性ゆえの不器用」
に悲哀を感じていたい。それは愛惜にも通じそうだ。
それは繁栄・滅亡どちらの人々にも、優しい眼差しを向
けること、そう思っている。

編集・削除(編集済: 2022年12月18日 08:01)

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