千紫万紅 荻座利守
千紫万紅の
花々が咲き乱れる野原に
独り佇んでいる
夢を見た
遥か霞む地平線にまで
色とりどりの絨毯が
果てしなく続く
それらの花々は
太古より今までの
永い永い年月の間に
散って逝った全ての花々
なぜだかわからないが
乳色の空に溶け込むように
霞む地平線を見て
直感的に
そのことがわかった
そして
その花々の中に独り
佇んでいる私は
野に咲く花々に見送られ
次の世界へと旅立つ
その侘しさや哀しさは
花々がみな吸い取って
己の花色へと換えてゆく
元は己のため
虫を呼ぶため生まれた花も
人と共に咲き
人と共に散ることにより
その哀しみを知り
花を愛でる者の
双眼に宿る
仄かな侘しさをも
己の花色へと昇華させて
路往く人の傍らに
そっと寄り添う
旅立ちの時を独り待つ
夢の中の野原にて
花が散る侘しさも
人が逝く哀しさも
みな千紫万紅の色となり
次の新たな季を
彩ってゆく