言霊 朝霧綾め
私は言霊を 信じている
見えないけれど
話すたび
するりと口から抜けでて
空気中をただようものを
言霊を信じているから
誰かの陰口をきいたとき
少しさびしくなる
ばれることのない嘘をついたとき
何かに
とがめられているような気がする
言霊よ
あなたの姿を
一度でいいからみてみたい
きっとあなたは
持つ意味や音の通りの
衣装をまとっている
たとえば
春、なら
やわらかく あたたかく
浮かぶように流れる姿が
夜、なら
しんと冷えた
つややかな紺色の姿が
走る、なら
素早い でもまとまりのある
一群の風が
見えないけれども
きっと ある
言霊よ
私の名は
私が自分につけた名は
どんな姿をしているのだろう
朝霧綾め
くっきりしているのか
ぼんやりしているのか
青いか
赤いか
あたたかいか
つめたいか
言霊よ
いつか姿を表しておくれ
私も自分の感じたことを
そのままの言葉で語るから