石畳 妻咲邦香
狭い入口だった
石畳の階段
座っていると
まるで通せんぼしているようだった
黒い猫と遊んだ
長い髭をたくさん持っているようなので
ひとつ頂戴と言った
猫はくれなかった
「ソゥリー」と言いながら紳士が脇を通り抜けた
知らずにスカートを踏んづけていった
私が邪魔してたから悪い
だけど
これから素敵な所に行く予定なのに
うっすらと足跡が付いた
私は足跡を連れて行くんだと思った
みんなは何と言うだろう
新しい友だちだと紹介しよう
恋人だとからかわれるかもしれない
貴方のことが好きですと
私はいつの日か、告白するのだろうな
そしてゆくゆくは
家庭を持つのだろうな
私は腰を上げた
足跡は幾つも付いていた
どうやら眠ってしまってたらしい
最後に残る思い出は
いつも必ず一つだけ
それでも私には声があり
言葉があり
詩があるから
毎日新しい扉を開ける
たとえ外が寒くても
可愛く生き残れ
拾えなかった声たちよ
明日咲くかもしれない花がある
私の綴る言葉には
どんな未来が待つだろう