福岡堰の雨桜
水門の停留所を降りて
小さな焼そば屋は混み合っていた
茨城県百景福岡堰と刻まれた石碑
小貝川が流れる緑の堤に
満開の雨桜の小道が果てしなく続く
こんな雨の中でも
花見に行き交う傘と人々の波
雨に濡れる鮮やかな桜の写真を
撮っても撮っても切りがない
桜の隧道と幾つもの橋を潜り抜けた先に
懐かしき屋台が連なり人々は足を止めていた
聳えたる福岡堰を越えて
雨桜は菜の花の小道に変わる
小貝川が流れる
どこか異国のような田舎道
林の中の小さな伊奈神社が
人知れず佇んでいた
雨桜の華やぐ夢に
酔い痴れたその日に
二人目の甥っ子が生まれたと
母から翌日に電話があった
携帯に送られた写真には
微笑む母親に抱き抱えられた
蕾のような小さな命
子猿のような赤ん坊の
芽生えたての産毛の髪はまだ濡れていた