パスワード 山雀詩人
いつになったら出れるだろう
狭いせまいこの部屋を
実際ここは本当に狭い
早くここから逃げ出したい
でもだめだ
ドアに鍵がかかってて
しかもここの鍵は変わってて
なんと言葉だ パスワードだ
普通パスワードは
英数字と記号で成るが
ここのは漢字 仮名
日本語の文章だ
だから長い ゆうに百桁
こんなの絶対解けっこない
もっとおかしいのが
美的センスが必要なこと
パスワードに美って
もう訳が分からない
でも作る とにかく作る
ここから出たい一心で
するとたまに奇跡が起きる
出来のいいのができあがり
なんと開くのだ 重いドアが
自動ドアのようにすーっと
たかが百余の文字の力で
いやあ 言葉ってすごい
でも哀しいかな
またドアがある
なんてこと
でも作る 再び作る
美的なパスワード
素敵なすてきなパスワード
するとまた奇跡が起こり
ドアがすーっ
でもまた次のドア
その繰り返し
いったい僕は何重に
閉じこめられているのだろう
いつか来るだろうか
すべてのドアを開け放ち
陽のあたる
自由な外へ出れる日が
それを夢見て今夜も作る
夜の夜中にひとりで作る
僕の閉じた心を開く
僕だけのパスワード
さてこれで 開くだろうか