話し相手が欲しかったんだ cofumi
朝目が覚めたら
夢の中に出てきた話し好きの蜂が
鼻の先に止まっていた
人差し指で躊躇なく弾いたつもりが
案の定自分の鼻先をやってしまった
起き上がろうとしたその足元には
豚が座り込んでいた
頼むからどいてくれと
手で追い払う仕草をしたが
頭に花冠を乗せ愛らしさを強調した豚は
つぶらな瞳でウインクをした
仕方なくするりと殻を脱ぐように
布団から抜けだし
シャワーを浴びようとバスルームへ行くと
バシャバシャと仔象が水を浴びて
シャボン玉の中で遊んでいた
お気に入りのボディソープは空っぽだ
あきらめて裸のまま窓を開けた
毎朝見かける野良猫が
僕の自転車にまたがり手を振ってきた
「君はいつも言い忘れていることがある。
朝は おはよう
お昼は こんにちは
夜は 今晩は
帰ってきたら ただいまだろ。」
なぁんだ みんな挨拶が欲しかったのか
そんな簡単なこといつでもしてやるさ
その日以来 挨拶で始まって
挨拶で一日が終わるようになった
そうか
僕は 話し相手がほしかっただけなんだ