沈める書架 暗沢
古本市 雨天決行
露台へ被さる 雨避けの
シートの下 並び連なる
古い印字 褪せた背表紙
それら仰向けの背表紙たちを
スケルトンのシートを介して
覗き込む事は 水底に沈める
古寂びた街を 見出すようだ
どこか この古き街へ降り立つ為の
梯子はないか?緘黙を維持のままに
沈みひしめく 古寂びた路地へと
櫛比する 殷賑の残響へと
どこか階(きざはし)はないか?それら在りし渾沌と
爛熟のたけなわ パノラマの展望へ降り立つ為の
天際に敷かれたパラフィンは灼け果てて
酸性の場景へはセビアカラーの幕が下りた
時間の塵埃に曝され尽くした それらモダンへ
人びとの住み着くことは よもや初めから
なかったのではあるまいか
書架よ 古き街よ 今暫くは沈め
引き揚げたくもあるのだが 雨脚は
思いの外強まったのだ もう声も聞こえて来てしまった
・・・・雨が強まりましたので、本日の古本市は只今を以て終了します。