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スレッドNo.128

港の恋物語 プラネタリウム

港町には物語が生まれやすいんだって、誰もが知ってる。コウカイが多いからだって。


最後から7人目の恋人は汐風がよく似合う君。

溶けたアイスを舐めたかったのに、鴎の羽ばたきに驚いて落としてしょげた青空があったね。地平線を眺めて、手を繋いで夢を語り合った夕焼けだって覚えてる。
冷たい風に君の赤毛が揺れて美しかったのは特に。

「船を見送るのが好き」だと、君は汽笛の音に耳を澄ませて目を閉じる。瞼の裏にどんな景色が広がるのか知らないまま、黙って船乗りに手を振った。さっさと出航してしまえ、と諦めて帽子のツバをそっと摘んだ。
見ていられないほど真っ直ぐな船出。
「もう行こう」と言ったのはどっちだっけ?

船を送り出し続けた夜の終わり、『また、いつか』と書いた置き手紙を、朝日にそっと残して君は部屋から消え去った。
もう戻らないことはわかっていて、それでも次を期待させる優しさに笑みがこぼれる。周りを見れば、君の匂いまでもトランクケースに詰め込んだのだと気が付いたよ。
君らしくて、心底憎い。
もしも本当に『いつか』が部屋のドアを叩いたら、きっと腰を抜かしてしまうから……

二度と帰らないで。


昨日までと同じように、午前7時に路面電車が家の前を通り過ぎて誰かをどこかへ連れていく。楽しげに笑う乗客に、お達者でと合図を送った。

……そうして、波音が耳をくすぐる港町へ降り立ったのは最後から6人目の恋人の貴方。

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