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スレッドNo.134

幼少  秋さやか

夏草の匂いが
立ち込めて
体じゅうに充満していた

痛そうなほど 
あかあかと滲む
夕暮れの空

皮膚に纏わりつく
生温い風が
自分と世界の境目を
絡めとってしまいそうで

逃げるように走り出せば
生い茂る夏草のなかへ
躊躇う間もなく転倒した

その先へ
放り出される虫かご

体の一部が
分解したような気がしたのは
虫かごを持っていたことを
忘れていたから

いま起きたことも
またすぐ忘れ
なにごともなかったように
立ち上がると

突き刺すような視線を
夕日に向けて
出口を探した

空がゆっくりと
瞼を閉じてゆく途中

どこかから
きこえてくる
遠汽笛

夏草の匂いが
いっそう濃くなる

震える鼓膜
を伝わって
震え出す胸の奥

また
置いて行かれてしまう

最後に見た
母さんの顔は
笑っていただろうか
泣いていただろうか

叫びたい衝動を押し込めて
捕まえたばかりの蝶を 
虫かごから放てば

不器用に羽を
風へ馴染ませながら
風へ帰ってゆく

まだ 
畏れを知らない
膝小僧からは
胸の熱さの逃げ場のように
血が流れ出している

いつか指先の
ほんの小さな ささくれさえも
許されないものに
なってしまうことを
まだ知らずに

無力だけれど
無敵でいられる夏を
膝小僧だけが
正しく
記憶し続けるだろう




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島様、いつもお世話になっております。
実は先日、詩の記録用に使っているブログに、
細密鉛筆画家の篠田教夫さんからコメントをいただきました!!
島様から評をいただいた、「海辺の断崖」についての詩を読んでくれたようで、
必要であれば作品画像を使用しても良いという連絡でした。
洞察力のある素敵な詩と思います、という感想まで添えていただき、感激してしまいました。
まさか篠田さんが見てくれるとは思いもしなかったので、私の執念が通じたようで(笑)、本当に驚きでした。
島様に提案していただいたタイトルを使わせていただきましたので、目に止まりやすかったのだと、とても感謝しております。
島様、本当にありがとうございました。

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