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スレッドNo.1349

感想と評 2022年12/30~2023年1/2 ご投稿分  三浦志郎  2023年1/7

たまたま 年をまたがる評になりました。
今年もよろしくお願い致します。


1 猫目屋倫理さん 「創造の神々へ」 12/30 初めてのかたなので、今回は感想のみ書かせて頂きます。

よろしくお願い致します。冒頭ながら、これから書くことは、好意的、平静なスタンスで言葉を使いますので、ご理解ください。ご承知のように物事には全て極論というのがあって「究極的に」とか「突き詰めてしまうと」といった表現で論じられるでしょう。この詩はそういった地点で書かれていると思います。注意すべきは、これは是非ではなく、作品の側面・個性といったことでしょう。傍証は多く拾えます。1、2連。「私は何も生み出せない」「~世界のほんの僅かなのだ」。5、6、終連などです。終連は、もしかすると詩のことをいっているのかもしれない。「突き詰めてしまうと」、残念ながら、その通りの部分はあります。流行り言葉で言うと、エッジの利いた考えであり表現という気もします。上記したような感覚はタイトルにも収斂するかのようで、興味深いものです。また書いてみてください。


2 妻咲邦香さん 「ラッキー13」 12/30

結論から書きます。「MY DEAR」の圏外にいますね。 まず、僕の目の前にタイトルが飛び込んできました。ご存じのように「13」は欧米(キリスト教世界)では、不吉とされています。僕は仏教徒なので(?)、あまり気にしませんが(笑)。これが「ラッキー」と繋がってい点に注目します。この感覚を持続させて読んで行くと、以下の言葉が浮かんできました。あくまでフィーリングですよ。

「逆説的」 「矛盾的」 「反世界的」

この論調は別に批判ではなく、手法という観点で書きます。これらを逆手にとって、詩を主に発展させている。
意味の取れない現代詩というのは、案外こういったアプローチがあるのかもしれない。
「逆説的」が一番説明しやすいので、実例を取り上げます。「透明という~」「十分生きた、だからこの先百年」「血の味~甘かった」「居心地のいい監獄」あたりですね。上記「矛盾」も同様でしょう。こういった手法は言葉としては面白い科学反応をしそうです。やや“いかにも”感はありますが。後は「反世界的」な思考・表現で詩の環境が作られ、周囲を包むように構成されています。
その実態というのを僕はこんな風に考えています。人はけっこう、突拍子もないこと、あり得ないようなこと、が断片的に、脈絡もなく浮かんで来る事、ありますよね?(僕はあるんです 笑)。ここでの分かれ道は、それらを言葉として組織・再生して自動書記的に詩という文芸に持って行けるか、行けないか、にかかっていると思うのです。僕はできません、妻咲さんはできます。その度合いが二人のスタイルを分かつ要因と思われます。もうひとつ、「書き分ける」ということを言っておきたいと思います。
その場にあわせてのフィーリングの微調整ということです。“言うは易き、されど”のように、なかなか難しいもんですね。名の通った作家は出版社や編集者の要請に応じて調整しますね。プロですよねえ。多分、妻咲さんもそれができるでしょう。ここで書き続けるには微調整して圏内にいることでしょう。あとは個人の意志・判断になります。 作品あとがきに鑑み、評価は控えておきましょう。


3 cofumiさん 「友人」 12/31

僕は友人というよりも恋人に読めてしまうんですがねえ。初連と2連、「あなた」を見つめる視線、思うこころが、本当に気持ちがこもった書きぶりで、むしろ心地よい味わいで読めます。「ほうきで~」と「オーブンでカリカリに~」の2か所。ウイットに富んでいて可愛らしいです。「悲し味」はちょっとした隠し味。終連の場面例はなかなか粋でオシャレです。こういう感覚は軽くテンションにしていて、いい感じ。底にあるものは、“実”のある心情なんですが、それをうまぁ~く軽快さに乗せています。いいですね。好きなフィーリングです。ただ、タイトルは何とかしたいです。僕が具体例を出してしまうと、なんかチンケになりそうなんで……、詩の真意とは実作者しかわからないものです。もう一度読んで(音読?)、ジワ~と蒸留されたものをフワリと付ければいいと思います。佳作半歩前で。


4 秋冬さん 「大晦」 12/31

まず、5連までの二つの景色のくだりです。対位法的なアプローチが面白く、リズムも醸しています。
日常~非日常という観点で言うと、大晦日はいわば定番的非日常。特別な日という感覚はありますね。そんな事を感じさせる導入部です。焦点になりそうなのは、年賀状のくだりでしょう。普通はこういったことはあり得ないし、平文でも書かないでしょう。当然のように詩的な比喩・修辞と見ます。この部分に積極的役割を見るとすれば、次連への導入でしょう。すなわち「住所のない人たち」の連が最も重要と思えるのです。この世にいない人々がだんだん増えてくる。これはやがて来る自明であるわけです。終連はそんな節理とはお構いなしに年は明けてゆくのだ、といった思考を読み取りたいのですが、額面通り普通に読まれると、平板と印象されやすいです。上記のような思考があるとすれば、そんな歯止めとして思考的なもう一連が欲しい気がしました。佳作一歩前で。


5 エイジさん 「冬ざれ」 12/31

冒頭佳作。
「冬ざれ」……冬の草木の枯れて荒涼たる様子、またその季節。とありました。「冬枯れ」とほぼ同じ意味かと思いますが、僕には前者の方が、少し広い視線を持っているようにイメージされました。
まず一読の印象として(詩のタッチを変えてきたな)―そんなことを感じていました。詩がフォーマルさを纏ったような……。こんなアプローチはエイジさんにとって良い方向に向かうと考えられるのです。冬ざれを示すアイテムもそれぞれふさわしい叙景がなされます。彩色が乏しくなったであろう冬景色に「あなた」がひとつの美しい点景のように登場します。「薬指の銀の輪」は一点の色彩感を醸します。やや意味深も醸します。街のくだりでは雰囲気をやや変えて。ここでも、ある距離感を保ちながら「あなた」はいます。この詩の良さは、沈むような情景に「あなた」を立たせたこと。ここが際立っています。最後も心に染み入るように印象的。言葉もきれい。美しい詩でした。


6 水野耕助さん 「他にない」 12/31

「他にない」は「~以外」とセットで語られることが多く、その「~」の部分があることを期待して、読んでいきましたが、それは明かされていない。僕なりに合点がいって、(あ、この詩は読み手が自由に対象を想像し代入すればいい仕組みになっているんだ)―そんな風に思ったわけです。
僕は「守る」といった概念を想像していました。それは地味で、けっしてカッコ良くなく、モチベーションの維持も大変です。この詩には、そういった背景や表現に、守るにちなんものが多いことにも気づきました。では何を守るのか?これも読み手ごとに考えられていい。自分・家族・友人・恋人・大切な物品・資産・主義主張、etc……。「守る」の対義語に「攻める」がありますが、僕は前者の方が地味ながら精神は気高い、と思っています。過酷なことではありますが、文中にある通り、「わかりやすい」と思っています。終連に対して、「うん、そうだ」と応えたいと思っています。佳作一歩前で。


7 ロンタローさん 「出涸らしのうた」 12/31

お久しぶりです。ようこそ、お出でくださいました。 どうしました? いたく回顧的ですが。年の瀬はそういった事を考えるムードを確かにもってはおります。確かに文中「時の経つのは本当に早い」ものですね。ご自身の体調とか、介護のこととか、大変なこともおありなのでしょう。後半3連は、やや寂し気ですが、穏やかな時間が流れているようで、焙じ茶を吞みながら、しみじみとして和みの境地にあるようです。
ロンタローさんは年配のかた、とは把握していますが、具体的にはよくわかりません。この詩について不用意なことは書けません。ただ、前半3連は全くその通り、共感致します。 評価はせずに、プリントアウトしてお預かり致しましょう。


8 晶子さん 「朝日を望む」 12/31

強め冒頭上席佳作です(チト長いナ…)
技術論的に優れているか否かは僕にはよくわかりませんが、心にヒットしたのがその理由です。
(いや、技術論もあるな……)つまり、こういった年末年始という特別な時期に、こういった端正で、時期に見合った詩が用意できること、これすなわち文体調整力という技術でしょう。そういったものが今回、意志を以ってベースとしている。つまり技術と心が好循環していると思えるのです。まずは初連、皮膚感覚で始まります。ウイルスの件があるからでしょう。個々の単語も魅力あるフレーズに接続し、とりわけ3回出て来る「私達」は他の詩にはない強力な磁場が感じられる。意志力の体現ということです。これらは要所に配され詩行を牽引しています。「花達」も同様の参加です。晶子さんは時に(はて?)とか指摘などもあったのですが、これは一分の隙もない。現時点自作コレクション筆頭か?これ、感動・絶賛。作品に気持ちも乗っている。終連の「私達」が最高峰。男性が書いたような意志力です。終連は、ミウラ、パワーをもらいましたよ。興奮してきた、なんか元気になってきた! 年頭にあたり、多くの人に味読して頂きたい。


9 大杉 司さん 「大晦日」 12/31

投稿時刻が「2022年12月31日 23:59」。名人芸のようなワザで、畏れ入りました。
この詩も活きようというものです。さて、この詩です。シンプルさが逆に嬉しく楽しくなります。これはこれで凄いことだと賞讃したいのです。まず初連、“力(りき)”入ってます。で、出掛けたはいいが、2、3連に見るとおり、所在なげになってしまう。この落差が実にいい。実に人間らしいのです。
そうですね。デパートや書店はこういった時間を過ごすのには持ってこいの場所なわけです。で、4連、ここ大事。「仕事や家事など、合目的的な行動が時に無い普通の人間」の生態はえてしてこういったことなのでしょう。この連はある意味、普遍と思えるほどです。そういった消息を大杉さん自らが実践して伝えてくれている重要さです。家に帰ってからも、ごく標準的。誤解を恐れず言うと、ほぼ50%の人はこういった時間を過ごしていると思えるのです。きわめて普遍にしてきわめて普通な大晦日です。しかし、大変面白く読ませて頂きました。ただもう少し詩的要素も欲しいという意味で、佳作一歩前を。


10 荻座利守さん 「初日の出」 1/1

「妙言無古今」。詩中で説明されているので助かりました。ありがとうございます。この言葉を聞いて初日の出を連想した。個人の感受性の自由度を尊重します。この両者の繋げ方は、いつも通りの筆運び、詩行運びで順調に行われています。特に終わり近くですね。古今の名言と初日の出の意義はどんな時にも耐える、人々に何かを授ける、この詩が謳い上げる大意です。ところで、その崇高さの中に、わずかに評価の分かれる要素が隠されているように感じました。いわく……

「ユニークで斬新な着想だ」
「両者は叙述の妙によって繋がってはいるが、本来的な意義概念の整合性に少し無理はないか」

単純に言えば上記のようなことです。で、僕は若干後者的な立場を引きずりそうなのです。
これは成功・失敗の話ではなく指摘でもありません、読み手の問題になります。当然、前者の人がいるはずだし、読み手の―詩界の高い位置にいる人まで含めて―様々だと思います。何故こういうことを書くかと言うと、荻座さんの場合、ごくたまぁ~に後者的兆候が見られた過去があり、その老婆心からのことなんです。この件は荻座さんに相応しく、レベルの高い話でしょう。ハードル高めのため、佳作一歩前で。


11 maut joeさん 「去年より愛をこめて」 1/1 初めてのかたなので、今回は感想のみとさせて頂きます。

まず、1行書いて1行空けて書くのは不可です。連毎の行空けはもちろんOKです。今回は初めてでもあり正月ですので、感想は書きます。以降はこのケースでは感想・評は書きません。左様お心得ください。詳しくは掲示板冒頭案内をお読みください。

ペンネームのことなど。「ジョー」は「JO」と「JOE」がありますが、僕は圧倒的に後者が好きですね。さて、作品です。初句、いきなり驚きの隠喩で始まります。当然「君」は反論します。「バカなことを~」「まさか~」―ここまでが6句目。以降は多少セクシャルな雰囲気を漂わせながら、おそらくは「君」が変わっていくことを示唆しているのかもしれない。この詩の雰囲気で言うと「脱皮」という概念が似合いそうな気がしてます。ただ、それが初句とどう繋がるかは不明でした。「初句を回収するように書いてください」とは言いません。何故なら、これは論文ではなく詩だからです。ただし意味は取れませんでした。ここは作者さんの選択ということで、何かを捨てて何かを得た、といったことだと思います。概観的には変則的な恋愛詩と把握できそうです。 また書いてみてください。


12 喜太郎さん 「大晦日」 1/2

これは詩ですが、歌にもはまりそうな気がします。生ギターでの弾き語りなど、似合うかもしれません。そんなフィーリングを意識され、語調というかリズムをまとめている感じがしました。断定はできませんが。この大晦日はひとつの方向性で書かれているのがわかります。愁いと哀しみと悔いといったもの。よく外国のブルースにこういった感覚がありそうです。3つの連で酒にまつわるフレーズが出てきますが、これらが本作のひとつの特長と言えます。それぞれの心を収束するような役割をし、同時にフレーズの区切りにもなっている。悲しみにただ流されるのではなく、締まった印象を与えています。こういった酒もあるわけです。評価は初めてになります。余力を見て佳作二歩前で。


13 まるまるさん 「今日もやらずにいられない」 1/2

こういった文章的なタイトルは、たまにタイミングを見て入れて来るといいですね。いい感じ。
この詩、最初は意気消沈。けれど、だんだん上向いて来る。その原因としての心理は詩行によると、「仕事がうまくいった」「風切っていた」しかも「明日は休暇」。条件、揃いましたね。数%「仕方がない」と“ケセラセラ”(なるようになるサ)の気分を含みながらも、まずまず心を整えたことがわかります。勢いを感じます。ところで、文中詩行とタイトルは指さして「あれ!」とは明示されませんが、そういうことではなく、むしろ、ご本人もあえて特定はしない。逆に言えば、何でもできそう、やりたい放題、そんな気分の代名詞か?上向いた気持ちの総称。そんな風に取った方が、味わえ共感できそうです。 甘め佳作を。


14 朝霧綾めさん 「フライパンに火をかけること」 1/2

詩人・石垣りんに「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」という作品があります。男女の役割が平等となった現代からすると、やむを得ないながら少し古さは感じます。が、名作に変わりありません。それを思い出します。偶然ながら一脈通じるところも感じました。僕が好きなのは感慨の飛翔の部分つまり、「メソポタミア~」の連、「人類のお料理~」の連、「みんな戦って~」の連、「戦いの美しい傷ができる」等、事実これらによって“一味違った”料理詩になりました。「お料理=戦い」とは、いや、気に入った!「攻めてますなあ」。この詩のシャープな切れ味です。どちらかと言うと、ほんわかムードの素材ですが、それだけでは終わらせないサムシングがあります。現在進行と挿話のバランスもちゃんと設計されています。日常最寄りの詩なのにロマンもある。切り込んでくる部分もある。もしかすると、その思想、石垣りんにも匹敵すべし。その伝統を引き継いだか?これは佳作以外考えられない。フライパンを駆使して、今日もおいしい料理を作ってくださいませ。


評のおわりに。

時節柄、大晦日、去年、新年、初日の出に関するものが多かったです。いつもより時の感覚を味わう時期かもしれません。
作品に大きな指摘もありませんでした。

評を書きながら、ある話が浮かんだので書いてみます。今、飛ぶ鳥を落とすほどの売れっ子作家のことです。その人は最初、
現代小説でスタートした。ところが全くの鳴かず飛ばず。編集者が呆れてこう言ったそうです。「あとは時代小説か、エロ小説ですね」(ていのいい廃業勧告)―で、時代小説に行った。これが大当たり。今では大家の仲間入り。では、また。

編集・削除(編集済: 2023年01月07日 13:05)

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